労務管理

【実務解説】令和8年度介護報酬改定の基本的な考え方

処遇改善・人材確保にどう備えるか

(ひらおか社会保険労務士事務所)

2025年12月23日、厚生労働省は、
「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告」を公表しました。

本資料は、社会保障審議会介護給付費分科会における議論を踏まえ、
令和8年度介護報酬改定(令和8年6月施行予定)の基本的な方向性を示したものです。

本記事では、介護事業者・経営者の視点から、
「今回の改定で何が重視されているのか」
「実務として今から何を準備すべきか」
を、わかりやすく整理します。

1.今回の介護報酬改定の大きな背景

今回の改定のキーワードは、ずばり
「人材確保の危機感」です。

政府の総合経済対策では、次のように明記されています。

  • 介護職員の賃金は一定程度改善してきた
  • しかし 他産業との賃金格差は依然として大きい
  • 人材不足は極めて深刻
  • 人材流出を防ぐため、報酬改定を待たず緊急対応も実施

👉 単なる制度改定ではなく、
「介護人材を守らなければ制度が成り立たない」
という強いメッセージが読み取れます。

2.令和8年度介護報酬改定の基本的な方向性

審議報告では、特に次の点が重視されています。

① 介護職員等の処遇改善の継続・強化

  • 賃上げの実施
  • 職場環境改善の後押し
  • 他職種と遜色のない水準を目指す方向性

② 人材の定着・確保を重視した制度設計

  • 「人が辞めない事業所」への評価
  • 処遇改善を形式だけで終わらせない仕組み

③ 改定時期は「令和8年6月施行」

  • 通常より遅い施行時期
  • 準備期間がある一方、油断は禁物

3.【事例】処遇改善が経営を左右したケース

事例①:処遇改善が追いつかず人材流出

事業所の状況

  • 処遇改善加算は取得
  • 実際の賃金改善は最低限
  • 職場環境改善は未着手

結果

  • 若手職員が他業界へ転職
  • 採用コスト増大
  • シフトが回らずサービス縮小

👉 「加算を取っている=安心」ではないことが明確に表れたケースです。


事例②:職場環境改善を含めた対応で定着率向上

事業所の取組み

  • 処遇改善計画を職員へ丁寧に説明
  • 賃上げ+シフト調整・研修制度の整備
  • 管理職のマネジメント研修を実施

結果

  • 離職率が大幅に改善
  • 採用時の応募数も増加

👉 今後の報酬改定では、このような事業所が評価されやすくなると考えられます。


4.経営者が今から準備すべき実務ポイント

令和8年6月施行とはいえ、
準備は「今」から必要です。

✔ チェックリスト

  • 処遇改善加算の配分ルールは職員に説明できていますか?
  • 賃金だけでなく、職場環境改善にも取り組めていますか?
  • 就業規則・賃金規程は現状に合っていますか?
  • 管理職の負担が過度になっていませんか?
  • 人材定着を「仕組み」で支えていますか?

5.まとめ|介護報酬改定は「人材戦略」の見直しの機会

今回の審議報告は、
介護報酬改定=経営戦略そのもの
であることを示しています。

  • 賃上げをどう実現するか
  • 職員に選ばれる職場か
  • 制度対応が実態と乖離していないか

これらを見直す絶好のタイミングです。


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