月をまたぐ振替休日は、給与計算で迷いやすいポイントの一つです。
「振替出勤した月と、振替休日を取得した月の賃金をどう処理するか?」
「割増賃金はどのタイミングで支払うのか?」
実務で混乱が生じるケースについて、わかりやすく解説します。
1.結論:月をまたぐ場合は相殺できない
振替休日の給与計算は、「賃金全額払いの原則(労基法24条)」 により、
月をまたいで賃金同士を相殺することはできません。
したがって、
発生した月ごとにそれぞれの事実(出勤・休日取得)に基づいて計算します。
2.【振替出勤した月】の給与計算
✔ 出勤した1日分の通常賃金(100%)を支払う
振替休日を別日に設定するために、この月では「出勤した事実」が生じます。
→ 振替出勤日の賃金は、通常どおり支給する(100%)
✔ 割増賃金が必要になる場合がある
振替出勤が発生した週について、次の状況があると割増賃金が必要です。
(1)週40時間を超えた場合
→ 超過分に 25%以上の時間外割増 が必要。
(2)就業規則で日曜が法定休日と定められている場合
土曜も日曜も勤務すると「週1回の法定休日」が確保できないため、
→ 振替後の法定休日に出勤した分は 35%以上の割増賃金 が必要。
※この割増賃金は 振替出勤した月 に支払います。
3.【振替休日を取得した月】の給与計算
✔ 休日を取得した1日分の通常賃金(100%)を控除する
翌月に振替休日を取った場合、その月には「休んだ事実」が生じます。
→ 振替休日1日分の賃金を控除(100%)
※ 給与計算上は欠勤扱いではなく「振替休日による不就労」です。
4.【実例】具体的な給与計算の流れ
◆事例1:月末に振替出勤 → 翌月に振替休日
状況
- 給与締日:月末
- 1月28日(日):イベント対応で出勤(本来の所定休日)
- 振替休日:2月5日(月)
◆【1月の給与計算】
- 1月28日の出勤分……通常賃金を支給
- 週40時間を超えていれば時間外割増25%を支払う
- 法定休日の振替が適切であれば、休日割増は不要
◆【2月の給与計算】
- 2月5日(振替休日)……賃金1日分を控除
◆事例2:週をまたいで振替した結果、法定休日が消失
状況
- 就業規則:日曜=法定休日、土曜=所定休日
- 3月30日(土):出勤
- 3月31日(日):出勤
- 振替休日:4月10日(水)
◆【3月の給与計算】
- 3月30日:通常賃金
- 3月31日:法定休日に勤務した扱い → 35%以上の割増賃金が必要
- 割増賃金はすべて 3月の給与 で支払う
◆【4月の給与計算】
- 4月10日(振替休日):1日分の賃金を控除
ポイント
振替休日は週単位の法定休日規制(1週1日)を満たすよう慎重に設定する必要があります。
5.企業が実務で注意すべきポイントまとめ
✔ 月をまたぐ振替は相殺NG(労基法24条)
✔ 出勤した月 → 出勤分+必要な割増賃金を支払う
✔ 休日を取得した月 → 振替休日分の賃金を控除
✔ 法定休日と所定休日の区別を理解しておくこと
✔ 週40時間超過の有無を必ずチェックすること
✔ 振替休日の設定は「週単位の法定休日確保」を前提とすること
給与計算・働き方の制度運用ともにミスが生じやすいため、
疑問があれば早めに専門家へご相談ください。
【無料相談】振替休日の給与計算・就業規則運用でお困りの企業様へ
振替休日の取扱いは間違えると「未払い賃金」に直結します。
御社のルールや運用状況を踏まえ、最適な対応をご提案します。