〜更新しないだけで「無期契約扱い」になるリスクとは?〜
ひらおか社会保険労務士事務所
有期契約労働者の契約満了時、企業が「更新しない(雇止め)」と判断する場面は少なくありません。
しかし、有期契約は自由に打ち切れるわけではなく、
誤った対応をすると “雇止め無効” と判断され、企業が「更新を承諾した」とみなされる重大なリスクがあります。
この記事では、企業が雇止めを行う際に必ず押さえておくべきポイントを、実務視点でわかりやすく解説します。
1. 雇止めには「厳格なルール」がある
雇止めは、以下の場合に成立しない可能性があります。
▼ ① 反復更新により、実質無期に近い状態
有期契約が繰り返し更新され、
- 3〜5年以上続いている
- 自動更新が続いている
- 企業側も実質的に無期雇用のように扱っている
などの場合、「期間の定めのない契約と同視できる」と判断され、雇止めが認められないことがあります。
▼ ② 労働者に「更新されるだろう」という期待が合理的にある場合
労働契約法19条は、「更新が期待される合理的理由」がある場合には、雇止めを無効としています。
合理的期待が生じる例:
- これまで毎回更新されてきた
- 上司が「次も更新します」と口頭で言っていた
- 無期雇用者と区別なく働いている
- 業務量や人員配置の状況から見て労働者が必要である
このような状況では、更新を拒否するためには相応の理由(能力不足・重大な問題行動など)が必要です。
2. 雇止めが不適切だとどうなる?
企業が雇止めを告げても、法的に認められない場合…
「従前の労働条件で更新を承諾したものとみなされる」
(労働契約法19条)
つまり、
会社が更新した扱いとなり、契約は継続していると判断される
非常に重い結果となります。
3. 予告義務を守らないと違法になる
厚労省の基準により、次の労働者には 少なくとも30日前の更新・非更新の予告 が必要です。
▼ 予告が必要な対象者
- 同じ契約を 3回以上更新 している
- 契約期間が 1年を超えて継続 している
※ただし、最初から「更新しないことを明示」している場合を除く。
30日を切ってから突然「次で終わりです」は、トラブルの元であり、行政指導の対象にもなります。
4. 企業には「更新基準の明示義務」がある
労働基準法14条および労働契約法により、企業は労働者に対して
- 契約更新の有無
- 更新する場合の判断基準(例:勤務態度・業務量の変動など)
を明示する義務があります。
判断基準を曖昧にしたままの雇止めは、ほぼ確実にトラブルを招きます。
5. 【実務の注意点】雇止めをする前に必ず確認すること
✔ ① 過去の契約更新の状況をチェック
反復更新がある場合、雇止めは非常に慎重に判断する必要があります。
✔ ② 評価資料・指導記録を残す
能力不足や問題行動を理由に雇止めする場合、
指導記録がないと会社側の主張が認められにくいです。
✔ ③ 更新基準が就業規則に明確に書かれているか確認
「会社の判断による」だけでは不十分。
✔ ④ 本人説明は丁寧に
契約満了の30日前より前に面談し、
- 更新しない理由
- 業務量や組織状況
- 契約内容
などを明確に伝えることが重要です。
6. 【実務でよくある事例】
◆ 事例①:毎年自動更新していたアルバイトを突然「更新しない」と告げた
→ 雇止め無効の可能性が高い。
理由
- 反復更新により「実質無期」と判断されやすい
- 本人に更新期待が強く生じている
- 企業側は業務上必要としていた
企業は更新を拒否する合理的理由を示す必要がある。
◆ 事例②:能力不足を理由に雇止めしたが、指導記録がない
→ 雇止めが社会通念上相当と認められない可能性。
能力不足を理由にする時ほど、
- 注意喚起
- 指導
- 目標設定
- 改善の機会付与
が重要であり、記録がなければ会社の主張が通らないことが多い。
◆ 事例③:業務縮小により雇止めしたケース
→ 適切に判断すれば雇止めが認められる可能性あり。
ただし、
- 予告義務を守る
- 業務縮小の状況を説明
- 他部署での勤務可能性を検討
といった手続きの適正さが不可欠。
◆ 事例④:契約書に「更新上限(3年)」が明記されていたケース
→ ルールに沿っていれば雇止めは適法となりやすい。
ただし、
- 本人が更新上限を知らなかった
- 説明を受けていなかった
などの事情があると無効となるリスクがあるため、
契約時の説明記録(署名付き)が重要です。
7. まとめ:雇止めは「自由にできるものではない」
企業側の基本的な注意点は次のとおりです。
- 反復更新や期待形成がある場合、雇止めは制限される
- 雇止めが無効になると、契約が更新された扱いになる
- 3回更新 or 1年以上継続なら30日前予告が必要
- 更新基準の明示は義務
- 記録(指導・評価・説明)は必須
- 一度の誤った判断で大きな法的リスクになる
雇止めは、企業労務の中でもトラブルになりやすい領域です。
実務では、「慎重すぎるくらいでちょうど良い」といえます。
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