労務管理

【実務解説】業務中の社用車事故

労災を使わず自動車保険で対応してもいい?
|ひらおか社会保険労務士事務所

はじめに(経営者の皆さまへ)

営業や配送などで社用車を使う会社では、

  • 業務中に交通事故が起きた
  • 従業員がケガをした
  • 「労災を使うべき?自動車保険で足りる?」

と判断に迷う場面が少なくありません。

結論から言うと、
業務中の自動車事故について、労災を使わず自動車保険で対応することは可能です。

ただし、使い方を誤るとトラブルになるポイントもあります。
今回は、実務で迷いやすい点をわかりやすく解説します。


1.結論:自動車保険での対応は可能です

業務中の自動車事故について、
労災を使わずに自動車保険(自賠責保険・任意保険)で対応することは可能です。

特に、相手方がいる交通事故の場合は、

👉 原則として先に自動車保険を使う

という取扱いが基本になります。


2.業務中の交通事故は「第三者行為災害」

業務中の交通事故は、多くの場合、

👉 第三者行為災害

に該当します。

第三者行為災害とは、

  • 業務中に
  • 第三者(相手車両など)の行為によって
  • 従業員が負傷した災害

をいいます。

この場合、

  • 自賠責保険
  • 相手方の任意保険
  • 自社の任意保険

などが関係してきます。


3.原則の流れ:まずは自動車保険

業務中の自動車事故では、原則として、

1️⃣ 自動車保険(自賠責・任意保険)で治療・補償
2️⃣ 不足分があれば、労災保険の利用を検討

という流れになります。

これは、
交通事故については、自動車保険による補償が制度として優先されているためです。


4.従業員が「労災を先に使いたい」と言った場合

ただし、ここで重要なポイントがあります。

👉 従業員が「労災保険を先に使いたい」と希望した場合は、
労災保険を先に使うことができます。

会社が一方的に、

  • 「労災は使わせない」
  • 「自動車保険だけで対応する」

と決めることはできません。

労災保険を使うかどうかは、原則として従業員の選択です。


5.二重取りはできません(重要)

注意すべき点として、

労災保険と自動車保険の両方から、
同一の事由について給付を受けることはできません。

たとえば、

  • 治療費
  • 休業補償

について、

  • 先に自動車保険から支給を受けた場合
    👉 労災保険では その分が控除されます。

これは、
労災保険法第12条の4・第29条に基づく取扱いです。


6.【実務事例】よくある判断ミス

事例:会社が労災申請を拒否したケース

  • 社用車で営業中に事故
  • 従業員が骨折
  • 会社が「自動車保険で足りるから労災は使わない」と説明

👉 従業員が後日、

「労災を使わせてもらえなかった」

としてトラブルに発展。

労災保険を使うかどうかを決めるのは会社ではありません。
この点を誤ると、信頼関係の悪化や行政指導につながるおそれがあります。


7.経営者が押さえるべき実務ポイント

✔ 業務中の交通事故は労災の対象
✔ 原則は自動車保険を先に使う
✔ 労災を使うかどうかは従業員の意思を尊重
✔ 同一事由での二重給付は不可
✔ 事故後は早めに社労士・保険会社へ相談


8.まとめ

  • 労災を使わず自動車保険での対応は可能
  • ただし、労災を排除することはできない
  • 保険の使い分けと説明が実務上のカギ

「労災か自動車保険か」は、二者択一ではありません。
状況に応じた適切な整理が重要です。


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