賃金の支払いは必要か?
|ひらおか社会保険労務士事務所
はじめに(経営者の皆さまへ)
もし、次のような事態が起きたらどう対応されますか。
- 従業員が犯罪に関与した疑いで警察に勾留された
- 数日〜数週間、出社できなかった
- 後日、警察の誤認で無実だったことが判明した
経営者としては、
「本人に落ち度がないのに、賃金を払わなくてよいのか?」
と悩まれる場面です。
今回は、このようなケースにおける
賃金支払いの要否と実務上の考え方をわかりやすく解説します。
1.結論:警察の誤認であっても、原則として賃金支払いは不要
警察の誤認により勾留されていた場合であっても、
原則として会社は勾留期間中の賃金を支払う必要はありません。
その理由は、労務管理の基本原則である
「ノーワーク・ノーペイの原則」にあります。
2.ノーワーク・ノーペイの原則とは?
ノーワーク・ノーペイとは、
労働の提供がない限り、
使用者は賃金を支払う義務を負わない
という考え方です。
勾留中の従業員は、
- 身体を拘束されており
- 会社の指揮命令下で労務を提供することが不可能
であるため、実際に労働が提供されていません。
この場合、たとえ本人に故意・過失がなく
「警察の誤認」であったとしても、
👉 会社の責任で労務提供ができなかったわけではない
ため、賃金支払い義務は原則として発生しません。
3.「会社の責任」かどうかが判断のポイント
賃金支払いが必要かどうかは、
✔ 労務不能の原因が
✔ 会社の責に帰すべき事由かどうか
で判断されます。
今回のケース
- 勾留の原因:警察の判断
- 会社の関与:なし
👉 会社の責任ではない
このため、ノーワーク・ノーペイが適用されます。
4.ただし注意:就業規則の定めがある場合
注意すべき点として、
就業規則でノーワーク・ノーペイと異なる定めをしている場合
には、話が変わります。
たとえば、
- 「公的機関の判断により就労できない場合は賃金を支払う」
- 「勾留・拘束期間中は休職扱いとし、一定割合の賃金を支給する」
といった規定がある場合には、
その就業規則が優先され、賃金支払いが必要となる可能性があります。
👉 実務上は、就業規則の確認が最優先です。
5.【実務事例】実際に起こり得るケース
事例:警察の誤認による勾留
- 営業職のAさんが窃盗事件の容疑で勾留
- 10日間出社不能
- 後日、真犯人が判明し釈放
会社では、
- 就業規則に特別な賃金支給規定なし
- 欠勤扱い(無給)と処理
👉 法的には問題なし
ただし、会社は次の対応を行いました。
- 本人に対して丁寧な説明
- 復職後のメンタル面への配慮
- 職場内での不用意な噂の抑制
結果として、トラブルには発展しませんでした。
6.実務対応で経営者が気をつけたいポイント
法的に賃金支払い義務がなくても、
対応を誤ると労使トラブルに発展するリスクがあります。
実務上のポイント
- ✔ 就業規則の内容を必ず確認
- ✔ 欠勤・休職・懲戒との区別を明確に
- ✔ 本人への説明は冷静かつ丁寧に
- ✔ 社内でのプライバシー配慮を徹底
「払わなくてよい」=「何をしてもよい」ではありません。
7.まとめ
- 警察の誤認による勾留でも
👉 原則として賃金支払い義務はなし - 理由はノーワーク・ノーペイの原則
- ただし、就業規則の定めがある場合は別
- 法的対応と同時に、実務・感情面の配慮が重要
労務トラブル対応に不安のある経営者さまへ
「このケースは賃金を払うべき?」
「就業規則の定めは問題ない?」
判断を誤ると、後から大きなトラブルにつながります。
👇 初回相談は無料です
ひらおか社会保険労務士事務所
経営者の立場に立った、
実務に強い労務管理をサポートしています。