労務管理

【実務解説】障害者雇用納付金制度とは?しくみ・金額・対象をわかりやすく解説|ひらおか社会保険労務士事務所

企業には、障害のある方と障害のない方がともに働きやすい職場づくりを進めるため、「障害者法定雇用率」が義務付けられています。

しかし、障害者を雇用するには、業務の配慮や設備整備など、一定の経済的負担が伴うことがあります。

そこで、その負担を企業全体で公平に分かち合い、障害者雇用を促進するために設けられているのが 「障害者雇用納付金制度」 です。

本記事では、制度の仕組み、納付金の金額、調整金・報奨金の受給、実務での注意点をわかりやすく解説します。


1. 障害者雇用納付金制度とは?

障害者雇用納付金制度は、次の目的で作られた制度です。

  • 障害者を多く雇っている企業の負担を軽減すること
  • 障害者を雇用していない、または少ない企業との負担の公平性を図ること
  • 全国の障害者雇用を底上げすること

背景には「社会連帯責任」の考え方があります。

障害者雇用は特定の企業だけが負担するのではなく、
社会全体で支えていくべきもの
という理念に基づいて運営されています。


2. 障害者雇用納付金制度の主なしくみ

制度は大きく、「納付金の徴収」と「調整金・報奨金の支給」に分かれます。


① 【納付金】法定雇用率に達していない事業主が支払う仕組み

対象企業
常時雇用している労働者が 100人を超える企業

内容
法定雇用率を下回っている場合、
不足人数 1人につき 月50,000円 を納付する必要があります。

② 【調整金】法定雇用率を超えて雇用している企業への支給

対象企業
常時雇用100人超

内容
超過人数 × 月29,000円 が支給されます。

【特例(2024年4月〜)】
超過人数の年間合計が 120人を超えた分 については
1人あたり 月23,000円 に減額。


③ 【報奨金】従業員100人以下の企業への支援

対象企業
常時雇用100人以下

内容
法定雇用率以上に雇用した人数 × 月21,000円 が支給されます。

【特例】
年間420人超の超過分は 月16,000円 へ減額。

中小企業でも障害者雇用に取り組みやすくするための制度です。


④ 【在宅就業障害者特例調整金(100名超企業)】

在宅で働く障害者や支援団体に仕事を発注した企業への制度です。

計算式
21,000円 ×(支払総額 ÷ 評価額350,000円)

ポイント

  • 法定雇用率未達成企業は、納付金額が減額
  • 達成している企業には支給される

⑤ 【在宅就業障害者特例報奨金(100名以下企業)】

100名以下の企業でも受給可能。
しかも報奨金の支給要件(法定雇用率達成)を満たさなくてもOKです。

計算式
17,000円 ×(支払総額 ÷ 評価額350,000円)


3. 【実務事例】こんなとき障害者雇用納付金制度の対象に


事例①:法定雇用率を満たしていない企業の場合

【状況】
従業員150名の会社
必要な障害者数:3人
実際の雇用:1人 → 不足2人

【結果】
不足2人 × 50,000円 = 月100,000円の納付金

【実務対応】

  • 障害者雇用の検討を急ぐ
  • 職務内容・配属の見直し
  • 設備整備の助成金も併用可能

事例②:障害者を積極的に雇用している企業の場合(調整金)

【状況】
従業員300名の製造業
必要数 6人
実際の雇用 8人 → 超過2人

【結果】
超過2人 × 29,000円 = 月58,000円の支給

【実務ポイント】
調整金を前提とした「障害者雇用計画」も有効。


事例③:【100名以下】小規模企業で初めて障害者を雇用

【状況】
従業員25名の小規模事業所が、初めて障害者を2名採用
→ 法定雇用率をクリア

【結果】
超過人数1人 × 21,000円 = 月21,000円の報奨金

【実務ポイント】
採用・配置・支援体制を整えれば中小企業でも大きなメリット。


事例④:在宅の障害者へ仕事を発注したケース

【状況】
在宅でパソコン作業を行う障害者へ年間35万円分の業務委託

【結果(100名超企業の場合)】
21,000円 ×(350,000円 ÷ 350,000円)= 21,000円支給

【実務ポイント】
在宅勤務の発注も障害者雇用促進の一環として認められる。

4. 障害者雇用納付金制度は「雇用率対策+企業支援」の制度

ポイントを整理すると…

  • 法定雇用率を満たさない企業 → 納付金(負担)
  • 法定雇用率を超える企業 → 調整金・報奨金(支援)
  • 在宅就業者への発注 → 追加の特例支援あり

障害者雇用の促進と企業の負担軽減の両方を目的とした仕組みです。

制度に馴染みがない企業では、
「どこから手を付ければ良いかわからない」という声も多くあります。


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