〜評価は「採点」ではなく、部下育成のスタートライン〜
ひらおか社会保険労務士事務所
人事考課は、給与や昇進のためだけの仕組みではありません。
資料でも明記されているように、「公正な処遇」と「人材育成」のために存在する制度です。
この記事では、管理職が知っておくべき 評価の基本・よくあるエラー・目標設定・面談の進め方 をわかりやすく解説します。
すぐ実務で活かせる「事例」も掲載しています。
1. 人事考課とは?
(資料1ページより)
▼ 人事考課の目的
- 公正な処遇:部下の成果・行動を正しく認識し、給与・賞与・昇進に反映する
- 人材育成:部下が自分の強み・課題を理解し「次に何をすべきか」明確にする
❗ 重要ポイント
資料では「人事考課は採点ではなく、育成のスタートライン」と強調されています。
評価は“終わり”ではなく、次の行動につなげるための出発点です。
2. 評価の対象は「事実」
▼ 評価の対象となるもの
- 業務で発揮された能力
- 目標の達成度
- 行動態度・意欲
▼ 評価の対象とならないもの
- 性格
- 出身地
- プライベート事情
資料にもある通り、評価者は 日頃の行動を観察・必要に応じて記録しておくことが必須 です。
「印象」ではなく「事実」で評価するためです。
3. 管理職に求められる役割
(資料1ページより)
評価者の仕事は「評価票に点数を書くこと」ではありません。
資料では以下の役割が明記されています。
- 部署をまとめる
- 部下の育成
- 必要な助言・指導・業務調整
▼ 心構え(OK / NG)
OK例
- 「従業員の努力をどう成長につなげるか」
- 「組織の方向性をすり合わせる機会だ」
NG例
- 「忙しいのに面倒な時期がきた」
- 「無難に当たり障りなく評価しておこう」
管理職の姿勢は、部下のモチベーションに直結します。
4. 管理職が陥りやすい評価エラー
(資料2ページより)
▼ よくある5つの評価エラー
① ハロー効果
「1つ良い(悪い)点があると、他も良く(悪く)見える」
② 中心化傾向
すべての評価を中間(普通)に寄せてしまう。
③ 寛大化傾向
部下に嫌われたくない・衝突したくないため評価が甘くなる。
④ 期末誤差
最近の出来事だけで判断し、期間全体を見ない。
⑤ 論理誤差
「営業だから明るいはず」「理系だから論理的だろう」など先入観。
5. 目標設定のポイント
(資料3ページより)
資料では、目標設定の質が評価の納得性を高める、と明確に示されています。
▼ 避けるべき抽象的な表現
- 効率化を図る
- 円滑に進める
- 推進する
- 努める/目指す/理解する
これは「気持ち」であって、成果ではありません。
▼ 良い目標とは?
- 理由が明確
- 達成までの行動(アクションプラン)が具体的
- 成果が測定できる(数値・成果物など)
- 等級や役割に合っている
6. フィードバック面談の進め方
(資料4ページより)
資料では「面談は通知ではなく対話である」と明記されています。
▼ 面談の基本の流れ
- アイスブレイク・目的共有
- 部下の自己評価を聞く
- 管理職の評価を伝える(理由をセットで)
- 事実と所見のすり合わせ
- 強み・課題を整理
- 次期の目標と育成プランを合意
評価は「納得感」が重要。
特に 強みを具体的に承認することで、部下の成長意欲が高まり離職防止にもつながる と資料で説明されています。
7. 【実務でよくある事例と対応ポイント】
▼ 事例①:評価が甘くなってしまう管理職
状況
部下と関係性を悪化させたくないため、高めの点数をつけてしまう。
問題点
- 公平性が失われる
- 部下の成長機会を奪う
- 組織全体の評価バランスが崩れる
対応
- 評価エラー(寛大化傾向)を自覚する
- 行動事実を記録に基づいて評価する
- 面談で「次の成長」に結びつける
▼ 事例②:目標が抽象的で評価ができない
状況
「業務を効率的に進める」という目標を設定したが、評価時に何をもって達成とするか不明。
対応
- 成果を数値化(例:月次処理の平均時間を◯%短縮)
- 行動レベルに分解
- なぜその目標が必要なのか理由を確認(資料の目標点検)
▼ 事例③:部下が評価に納得しない
状況
期末誤差に影響され、直前の失敗だけで評価を下げてしまった。
対応
- 評価期間全体の記録を見直す
- 事実・理由と共に説明
- 次期に向けてどのように改善するかを一緒に考える
(資料内のフィードバックステップより)
▼ まとめ
管理職が理解すべきポイントは以下の4つです。
- 評価は「育成のスタートライン」
- 事実に基づく評価が最重要
- 評価エラーを自覚すること
- 面談は“対話”であり、強みの承認が離職防止につながる
評価の質は、組織文化の質を決定します。
管理職が評価スキルを高めることで、組織全体の生産性とエンゲージメントが向上します。