インフルエンザ・新型コロナに企業が備えるべき実務対応
冬場を中心に、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症が再び経営リスクとして注目されています。
感染症対策は「従業員の健康管理」にとどまらず、事業継続(BCP)・労務トラブル防止の観点からも、経営者が押さえておくべき重要テーマです。
2025年には、厚生労働省より
「急性呼吸器感染症(ARI)に関する特定感染症予防指針」 が公表され、企業においても“平時からの備え”がより重視されています。
本記事では、経営者が知っておくべきポイントを実務目線で分かりやすく解説します。
1.急性呼吸器感染症(ARI)とは?
急性呼吸器感染症(ARI)とは、
鼻・喉・気管・肺などに急性の炎症を起こす感染症の総称です。
代表的なものとして、次の感染症が含まれます。
- インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
- RSウイルス感染症
- ヘルパンギーナ など
特にインフルエンザと新型コロナは、
✔ 同時流行の可能性
✔ 職場内での集団感染リスク
が高いため、企業として重点的な対策が求められます。
2.インフルエンザと新型コロナの違い(経営者が知るべき点)
■ 流行の特徴
- インフルエンザ:主に冬季(12月〜3月)
- 新型コロナ:年間を通じて発生(夏・冬に増加傾向)
■ 感染経路の違い
- インフルエンザ:飛沫・接触感染が中心
- 新型コロナ:エアロゾル感染のリスクも高い
👉 そのため
「マスク・咳エチケットだけでは不十分」
「換気対策」がより重要
という点が、企業実務では大きな違いになります。
3.企業が今すぐできる基本的な感染症対策
① 換気・加湿・消毒の徹底
- 定期的な窓開け・換気(会議室は特に注意)
- 湿度50~60%を目安に加湿
- ドアノブ・共有PC・会議テーブルの消毒
② 従業員への予防意識の周知
- 正しい手洗い・咳エチケットの周知
- 体調不良時は「無理に出勤しない」ルール化
- 社内掲示や社内メールでの注意喚起
③ 産業医との連携
- 出勤判断・職場環境改善について助言を受ける
- 自社に合った現実的な対策を一緒に検討
4.【重要】従業員が感染した場合の労務対応ルール
(1)感染報告ルールを決めておく
- 誰に・どのタイミングで報告するかを明確化
- 上長→総務(労務)などのフローを事前に決定
(2)出勤停止期間は「会社ルール」で定める
法律上、インフルエンザ・新型コロナに
一律の出勤停止期間は定められていません。
そのため、企業は就業規則等で
「自社ルール」として出勤停止期間を明示することが重要です。
5.休業手当が必要になるケースに注意
感染症を理由に、会社の判断で自宅待機を命じる場合は、
原則として
👉 休業手当(平均賃金の6割以上)
の支払いが必要になります。
「感染防止のため念のため休ませる」
この判断が、思わぬ人件費リスクにつながることもあるため要注意です。
6.実務でよくある事例(中小企業)
【事例】製造業A社(従業員30名)
- 従業員が新型コロナに感染
- 明確な社内ルールがなく、全員を自宅待機に
- 結果:複数日にわたり休業手当の支払いが発生
👉 事前にルールを整備していれば、対応・コストともに最小限で済んだケース
7.経営者が今、見直すべきポイント
- 感染症発生時の報告ルールは明確か
- 出勤停止期間・休暇の扱いは整理されているか
- 休業手当が発生するケースを理解しているか
- 従業員に制度がきちんと周知されているか
これらはすべて、
「起きてから考える」では遅いテーマです。
まとめ|感染症対策は“経営リスク対策”です
急性呼吸器感染症(ARI)への対応は、
✔ 従業員の健康確保
✔ 労務トラブル防止
✔ 事業継続の安定
すべてに直結します。
「感染症対策=現場任せ」ではなく、
経営としてルールを整えることが、これからの企業には求められています。
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