労務管理

社会保険の「任意適用事業所」とは?

― 強制適用でなくても加入できるケースがあります ―
(ひらおか社会保険労務士事務所)

「うちは個人事業で人数も少ないから、社会保険は関係ない」
「飲食店だから社会保険に入れないと思っていた」

このような誤解は、実務の現場でとても多く見られます。
強制適用には該当しなくても、条件を満たせば社会保険に加入できる制度
「任意適用事業所」です。

今回は、経営者の方向けに
任意適用事業所とは何か、どんな事業所が対象になるのか、実務上の注意点をわかりやすく解説します。

1.社会保険の「任意適用事業所」とは?

任意適用事業所とは、
本来は社会保険の強制適用事業所ではない事業所が、一定の手続きを行い、認可を受けて社会保険が適用される事業所をいいます。

ポイントは次の3点です。

  • 強制ではない
  • 事業主の申請が必要
  • 国(厚生労働大臣)の認可が必要

つまり、希望すれば加入できるが、自動的には加入にならない制度です。


2.任意適用事業所の対象となる事業所

任意適用の対象となるのは、次のような事業所です。

① 常時雇用する従業員が5人未満の個人事業所

たとえば、

  • 個人経営の店舗
  • 従業員が2~4人程度
  • 法人ではない

といったケースです。


② 非適用業種に該当する個人事業所

個人事業で、かつ次のような 非適用業種 に該当する場合も、任意適用の対象となります。

【主な非適用業種】

  • 農業・林業
  • 漁業
  • 宿泊業・飲食サービス業
  • 生活関連サービス業(理容業・美容業・洗濯業 など)
  • 娯楽業(映画館、スポーツ施設提供業 など)
  • 専門サービス業の一部(デザイン業、経営コンサルタント業 など)
  • 技術サービス業の一部(写真業)
  • その他(警備業、ビルメンテナンス業、宗教・団体 等)

※「飲食店=社会保険に入れない」というわけではありません。


3.任意適用になるための手続き(重要)

任意適用事業所になるためには、
事業主の判断だけでは足りません。

必要な要件

  • 従業員の2分の1以上の同意を得ること
  • 事業主が申請すること
  • 厚生労働大臣の認可を受けること

👉 同意書の取得や書類不備があると、申請が通りません。

また、

  • 「健康保険のみ加入」
  • 「厚生年金保険のみ加入」

といった 制度ごとの加入も可能です。


4.【事例】実務でよくあるケース

✅ 事例①:飲食店が任意適用を選択したケース

  • 個人経営の飲食店
  • 従業員4名
  • 社会保険は未加入

従業員から
「将来の年金や保険が不安」という声が上がり、
任意適用事業所として社会保険に加入

👉 採用面での印象が良くなり、
👉 定着率も改善した。


❌ 事例②:同意を取らずに進めようとして失敗したケース

  • 個人事業主が独断で申請
  • 従業員の同意書が未取得

👉 年金事務所から差戻し
👉 手続きが長期化し、従業員との関係も悪化


5.経営者が実務で検討すべきポイント

✔ 従業員数は何人か
✔ 個人事業か法人か
✔ 業種は適用業種か非適用業種か
✔ 社会保険料の会社負担を考慮できるか
✔ 採用・定着への影響

任意適用は、
「コスト」だけでなく「人材確保・信用力」も含めて検討する制度です。


6.まとめ|任意適用は「戦略的な選択」です

社会保険の任意適用事業所は、

  • 法律上は義務ではない
  • しかし、経営判断として有効な選択肢

となるケースも少なくありません。

特に、

  • 人材確保に悩んでいる
  • 若い従業員が多い
  • 将来的に法人化を検討している

このような事業所では、早めの検討が重要です。


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