―「勤務時間外・社外=対象外」は危険です―
経営者の方から、よく次のようなご相談を受けます。
「社外での出来事でも、会社のハラスメント責任になりますか?」
「飲み会や移動中のトラブルも対象になるのでしょうか?」
結論から申し上げると、
社外で起きた出来事であっても、ハラスメントに該当する可能性は高いです。
1.ハラスメントにおける「職場」は非常に広く定義されています
ハラスメントの判断において重要なのは、
「社内かどうか」「勤務時間中かどうか」ではありません。
厚生労働省の指針では、
ハラスメントにおける「職場」を、次のように広く捉えています。
🔹 ハラスメント上の「職場」に含まれる例
- 従業員が就業する場
(オフィス、社外の打ち合わせ場所、営業車の中 など) - 懇親会の場
(忘年会、歓迎会、接待、社内行事 など) - 実質的に仕事の延長と考えられる場
(取引先への移動中、タクシーでの同乗、出張先の宿泊先 など)
つまり、
「仕事との関連性」があれば、社外であっても「職場」になり得る
ということです。
2.判断のポイントは「仕事との関連性」
社外の出来事がハラスメントに該当するかどうかは、
次の点を総合的に考慮して判断されます。
- 業務との関連性があるか
- 参加が業務命令・事実上の強制か
- 上司・取引先との関係性があるか
- 業務上の話題が中心となっていたか
特に、
- 「仕事の話をしていた」
- 「断りにくい雰囲気だった」
といった事情がある場合、
職場性が認められやすくなります。
3.「勤務時間外だから大丈夫」は通用しません
よくある誤解として、
「勤務時間外だから」
「業務後の飲み会だから」
「会社の外だから」
という理由で、
ハラスメントに該当しないと考えてしまうケースがあります。
しかし、
ハラスメントの判断では、時間や場所は決定打になりません。
仕事が終わって社外に出た後であっても、
言動の内容や関係性によっては、
会社の責任が問われる可能性があります。
4.【事例】社外でもハラスメントと判断されるケース
事例①|飲み会での発言
業務後の懇親会で、上司が部下に対して
容姿や私生活について繰り返し発言。
👉 任意参加の飲み会であっても、
上司・部下の関係性や発言内容から
職場の延長と判断され、ハラスメントに該当。
事例②|移動中の車内
営業先への移動中、営業車の中で
上司が部下を大声で叱責。
👉 移動中であっても、
業務遂行の一環として
ハラスメントに該当する可能性が高い。
5.経営者が取るべき実務対応
経営者として重要なのは、
「社内だけ対策すればよい」という考えを捨てることです。
実務上のポイント
✅ 社外・勤務時間外も対象になることを明確に周知
✅ 懇親会・出張・移動時の言動にも注意喚起
✅ ハラスメント防止方針を具体的に示す
✅ 管理職向け研修で事例を用いて説明
「知らなかった」「社外だから」は、
会社を守る理由にはなりません。
6.まとめ(経営者の方へ)
- 社外で起きた出来事でもハラスメントに該当する可能性は高い
- 「職場」の範囲は非常に広い
- 判断基準は「仕事との関連性」
- 社外・勤務時間外も含めた周知と教育が不可欠
ハラスメント対策は、
トラブルが起きてからでは遅い分野です。
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