有給休暇を取得した場合、歩合給制の従業員の給与はどうなる?
ひらおか社会保険労務士事務所
営業職や販売職などで多い歩合給制(出来高払制)。
このような従業員が年次有給休暇を取得した場合、給与はどう扱えばよいのか、迷われる経営者の方も多いのではないでしょうか。
「歩合だから有給は無給でいいのでは?」
「固定給がない場合、いくら払えばいい?」
今回は、労働基準法に基づく正しい考え方と実務対応を、事例を交えて解説します。
1.結論|歩合給制でも有給休暇は「有給」です
まず大前提として、
👉 歩合給制の従業員であっても、年次有給休暇は必ず有給
です。
労働基準法では、有給休暇を取得した日について、
一定の賃金を支払う義務があると定められています。
2.有給休暇中の賃金は「3つの方法」から選択
歩合給制の従業員が有給休暇を取得した場合、
就業規則などで定めることにより、次のいずれかの方法で賃金を支払います。
① 平均賃金
直近3か月間に支払った賃金総額 ÷ その期間の総日数
※労基法上の原則的な方法
② 通常の賃金(所定労働時間労働した場合に支払われる賃金)
歩合給制の場合は、
特別な計算方法により有給休暇日の賃金を算定します。
計算式
賃金算定期間における歩合給総額÷ 賃金算定期間における総労働時間数× 1日平均所定労働時間数
👉 「有給を取ったらゼロ」にはなりません。
③ 標準報酬月額の30分の1相当額
※ 労使協定の締結が必要
社会保険の標準報酬月額を基にした方法で、
事務負担を軽減したい企業で採用されることがあります。
3.【実務事例①】営業職(完全歩合制)
ケース
- 営業職(基本給なし・完全歩合制)
- 月の途中で年次有給休暇を1日取得
誤った対応
「成果が出ていないので、その日は無給」
➡ 違法の可能性あり
正しい対応
- 平均賃金
または - 通常の賃金(歩合給を基に算定)
を支払う必要があります。
📌 歩合=有給なし、はNGです。
4.【実務事例②】販売職(固定給+歩合)
ケース
- 固定給+インセンティブ
- 有給休暇を取得
実務のポイント
- 固定給部分:通常どおり支給
- 歩合給部分:
→ 上記の特別計算方法で有給休暇日の賃金を算定
📌
「歩合部分は一切考慮しない」
という運用はトラブルになりやすい点に注意が必要です。
5.就業規則の定めが非常に重要です
有給休暇中の賃金については、
- どの方法を採用するのか
- 歩合給部分をどのように算定するのか
を、就業規則や賃金規程で明確に定めておくことが重要です。
定めがない場合、
👉 原則として平均賃金での支払いが求められます。
6.経営者が注意すべきポイントまとめ
✅ 歩合給制でも有給休暇は「有給」
✅ 支払方法は3種類ある
✅ 通常の賃金を選ぶ場合、特別な計算が必要
✅ 就業規則・賃金規程の整備が不可欠
まとめ|歩合給×有給は「設計」が重要です
歩合給制の有給休暇は、
- 計算が複雑
- 現場任せにすると誤りやすい
- 未払い賃金トラブルにつながりやすい
という特徴があります。
事前にルールを決め、制度として整えておくことが、
経営者にとって最大のリスク対策です。
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根拠法令
- 労働基準法 第39条(年次有給休暇)
- 労働基準法施行規則 第25条