こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。
職場で耳にすることのある「陰口」や「悪口」。
本人がその場にいなければ「問題にならない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、東京高裁令和5年10月25日判決(医療法人Bテラス事件)では、本人不在の場での悪口もハラスメント(不法行為)と認定されました。本記事では、この判例を踏まえて実務で注意すべき点を解説します。
1. 事件の概要
- 被告:歯科医院を経営する医療法人とその理事長(院長)
- 原告:勤務していた女性歯科医師
- 主張内容:
- マタハラや職場環境配慮義務違反を受けたとして損害賠償を請求
- 特に「本人不在時に院長が他のスタッフと一緒に悪口を言っていた」点を問題視
2. 裁判所の判断
第一審
「陰口は本人が直接聞いたわけではなく、不法行為にはあたらない」と判断。
控訴審(東京高裁)
- 録音内容から、院長が
- 「態度が懲戒に値する」
- 「子供を産んでも実家の協力は得られないのでは」
- 「マタハラで訴えようとしているのでは」
- 「育ちが悪い、家にお金がない」
といった揶揄をしていたことが認定。
- 裁判所は、
「院長という立場を踏まえると、本人不在での侮辱的発言も就業環境を害する行為にあたり、不法行為が成立する」
と判断しました。
3. 実務上のポイント
① 本人不在でもハラスメントになる
- 直接本人に伝えていなくても、職場環境を悪化させる言動はハラスメント認定され得る。
- SNSや伝聞を通じて本人に伝わり、トラブルになることも多いです。
② 役職者の言動は特に重視される
- 院長・部長など役職者の発言は「職場のメッセージ」として受け止められやすい。
- 役職者が不適切な会話に加わると、「この人は軽んじても良い」という空気を広める危険があります。
③ 職場環境配慮義務の一環としての留意点
- 使用者には、労働者が快適に働ける環境を整える義務があります。
- 陰口も含めてハラスメントが放置されると、この義務違反を問われる可能性がある。
4. 実務事例
ある医療機関で、上司が本人不在時に部下の勤務態度を揶揄していたところ、同僚が本人に伝えてトラブルになりました。
結果的に職場全体の雰囲気が悪化し、離職者が続出。経営側は対応に追われ、業務に大きな支障をきたしました。
このように「軽い悪口」が、職場の信頼関係を崩壊させる引き金となることがあります。
5. まとめ
- 本人不在であっても、揶揄・侮辱はハラスメントに認定されるリスクがある
- 特に役職者の発言は職場全体に影響するため、細心の注意が必要
- 悪口・陰口を放置しない「風土づくり」が安全配慮義務の一部
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