労務管理

【実務解説】退職勧奨の正しい進め方と注意点

こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。

「退職勧奨」と聞くと、「退職強要」と混同されることが少なくありません。
しかし、両者には大きな違いがあります。企業が不適切に退職勧奨を行えば、違法行為と判断され損害賠償に発展するリスクもあるため、正しい手順と配慮が不可欠です。

1. 退職勧奨・退職強要・解雇の違い

  • 退職勧奨:退職を勧める行為。最終的な判断は労働者の自由意思。
  • 退職強要:執拗な説得や脅迫で退職を強制する行為。違法。
  • 解雇:使用者による一方的な雇用契約解除。法的ハードルが高く、有効性を争われやすい

2. 退職勧奨の基本的な流れ

対象者のヒアリングと過去対応の確認
入社日・契約内容・人事評価・面談記録などを整理し、改善の余地を検討

    ②優遇条件の設定
    解決金・退職日・引継ぎ方法を調整。一般的には「月給3〜6か月分」が目安とされる

    ③面談の実施
    人事責任者や役員が同席し、冷静に経緯と条件を説明。録音される前提で発言することが重要

    ④条件のすり合わせ
    金銭・退職時期などの具体条件を対象者と交渉。

    ⑤退職合意書の締結
    合意が得られたら速やかに書面を交わす

    3. 面談時の留意点

    • 面談回数は多すぎず少なすぎず。最大4〜5回程度が目安。
    • 実施場所は社内の会議室。飲食店や自宅訪問はNG。
    • 面談は業務時間内、または就業後1時間以内に行うのが望ましい。
    • 相手の発言は最後まで遮らずに聞き、感情的な対応を避ける。

    4. 事例紹介:下関商業高校事件

    ある高校では、定年退職を理由に数年にわたり退職を勧め続け、最終的には3〜4か月間に11回以上の面談を実施。これが「執拗で違法な退職勧奨」と認定され、精神的苦痛に対する損害賠償が命じられました。

    この事例からも、回数や方法を誤ると違法と判断されるリスクがあることが分かります。


    まとめ

    退職勧奨は、あくまで従業員の自由意思に基づく合意が前提です。
    不適切な対応は「退職強要」とされ、企業に大きな法的リスクをもたらします。

    • 事前準備(人事評価・雇用契約内容の確認)
    • 優遇条件の明確化
    • 面談の適切な実施と記録

    これらを徹底することで、トラブルを防ぎつつ円滑な解決につなげることができます。


    ✅ 退職勧奨の進め方や合意書の作成などでお困りの際は、専門家にご相談ください。

    👉 無料相談・お問い合わせはこちら