はじめに
年金事務所(日本年金機構)は、定期的に企業へ社会保険の加入状況調査(実地調査)を行っています。
この調査で「加入要件を満たしているのに社会保険に加入していない」ことが発覚するケースは少なくありません。
「従業員が短時間勤務だから…」
「パートだから加入しなくてもいいと思っていた…」
――そんな理由では通用せず、加入漏れが確認されれば、届出を拒むことはできません。
今回は、調査の流れから、届出を拒んだ場合のペナルティまで、実務の現場で押さえておきたいポイントを解説します。
2.加入漏れが発覚したらどうなる?
✅ 加入の指示
調査の結果、要件を満たしていることが確認されれば、
年金事務所から社会保険の加入手続を行うよう指導されます。
ここで企業が「加入したくない」「本人が望んでいない」といった理由で拒むことはできません。
社会保険(厚生年金・健康保険)は強制適用制度であり、
事業主と労働者の合意にかかわらず、法定基準を満たした時点で加入義務が発生します。
3.届出を拒否した場合の対応
もし事業主が届出を拒否した場合、
年金事務所は厚生年金法に基づき、職権で強制的に加入手続きを行うことができます。
📖【法的根拠】
厚生年金保険法 第100条の2
「日本年金機構は、必要があると認めるときは、報告又は資料の提出を求めることができる。」厚生年金保険法 第102条(罰則)
「正当な理由なく届出等を怠った場合は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
つまり、届出拒否=法令違反です。
さらに、過去2年分の保険料を遡って納付するよう求められる場合もあります。
4.実務で起こりがちなケース(事例)
【事例】
大阪府のある小規模事業所では、
正社員3名・パート5名を雇用していました。
パート社員のうち2名が、
- 週30時間勤務
- 月収10万円前後
- 雇用期間が1年以上
という状況であったにもかかわらず、
「パートだから対象外」として社会保険に加入させていませんでした。
【結果】
年金事務所の定期調査で、過去の賃金台帳と出勤簿を確認したところ、
明らかに加入要件を満たしていることが判明。
年金事務所は事業主に遡及加入(2年分)を指示しました。
事業主は一時的に負担が大きくなることを理由に届出を渋りましたが、
「強制適用」で加入が実施され、
最終的に事業主・従業員双方の保険料負担分を遡って徴収される結果となりました。
5.実務担当者が注意すべきポイント
| チェック項目 | 内容 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| ✅ 加入要件の確認 | 週20時間以上・月8.8万円以上・雇用2か月超・学生以外など | 年初・新年度ごとに全従業員を確認 |
| ✅ 賃金台帳・勤怠記録 | 調査で提出を求められる資料 | 正確な記録・保存を徹底 |
| ✅ 拒否・未届リスク | 最大50万円以下の罰金、職権適用、遡及納付 | 指導を受けたら速やかに届出対応 |
6.まとめ
- 社会保険の加入は「義務」であり、拒否できません。
- 届出を怠れば、罰則や強制加入、保険料の遡及納付のリスクがあります。
- 定期的に加入要件の自己点検を行い、未加入者がいないか確認することが重要です。
ひらおか社会保険労務士事務所より
当事務所では、
- 社会保険の適用状況チェック
- 年金事務所調査の事前準備サポート
- 調査後の是正報告書作成代行
など、企業のリスクを最小限に抑える支援を行っています。
「加入要件を満たしているか分からない…」とお悩みの方は、ぜひご相談ください。
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