~毎月支給している“退職金相当額”の正しい扱い~
こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。
最近は「退職金制度をなくし、その分を毎月の給与に上乗せする」企業も増えています。
このときに必ず出る質問が――
「前払いしている退職金は、労働保険(労災・雇用)の算定に含めますか?」
結論からお伝えします。
✅ 結論:前払い退職金は“労働保険の計算基礎に含める”
📌 理由
労働保険料の算定対象(賃金総額)には、
「労働の対償として支給されるすべてのもの」 が含まれるため、
毎月の給与として支給される前払い退職金は賃金とみなされます。
| 支給形態 | 労働保険に含める? |
|---|---|
| 退職時に一括支給 | ❌ 含めない(退職金) |
| 毎月給与に上乗せ(前払い) | ✅ 含める(賃金扱い) |
🧾 なぜ“前払い”は退職金ではなく賃金になるのか?
退職時に支給される本来の退職金は、在職中の労務提供とは直接関係しない支給とされ、保険料の対象外です。
一方、前払いは以下の理由で「賃金」扱いとなります。
- 毎月の労働に対して支払われている
- 在職中に自由に使える
- 賞与や基本給と性質が似ている
🏢【実務事例】前払い退職金として月2万円を支給していたA社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 飲食業(従業員15名) |
| 内容 | モチベーション維持のため、退職金を月額手当で前払い |
| 対応 | 労働保険申告で含めず申告 |
| 結果 | 労基署調査で「賃金」に該当すると指摘 → 過去2年分を追徴 |
教訓:
“名称が退職金でも” 毎月払っていれば 賃金とみなされます。
📊 実務チェック:前払い退職金が労働保険対象になるか?
| チェックポイント | 対象? |
|---|---|
| 在職中に毎月支払い | ✅ 含める |
| 賞与に上乗せ支給 | ✅ 含める |
| 就業規則に「退職金の前払い」と明記 | ✅ 含める |
| 退職後に一括支給 | ❌ 含めない |
⚠ よくある誤解
| 誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 名前が“退職金”なら除外できる | ❌ 支給のタイミングで判断 |
| 退職金前払いだから保険料不要 | ❌ 毎月=賃金として扱う |
🛡 税金・社会保険との違いにも注意!
| 制度 | 前払い退職金の扱い |
|---|---|
| 労働保険(労災・雇用) | ✅ 含める |
| 社会保険(健康・厚生年金) | ✅ 含める |
| 所得税 | ✅ 給与所得として課税 |
| 本来の退職所得控除 | ❌ 適用されない |
🔍 まとめ
✅ 毎月支給される退職金相当額は「賃金」扱い
✅ 労働保険・社会保険・所得税すべてで“給与”として扱う
⚠ 名称よりも「支払いタイミング」が基準
📩 ご相談ください
「前払い退職金を導入したいが、制度設計が不安」
「労働保険申告の修正が必要か知りたい」
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