~内定・内々定の違いと企業が取るべき対応~
こんにちは。ひらおか社会保険労務士事務所です。
新卒採用を行う企業から、次のような相談を受けることがあります。
「採用予定だった学生に内々定を出しているが、
経営環境が悪化したため、取り消したい。可能ですか?」
採用辞退とは異なり、企業側からの内々定取消しには法的リスクが伴います。
今回は、「内々定」と「内定」の違いを理解しながら、適法・不適法の判断ポイントを解説します。
🏁 まず整理:内々定と内定の違いとは?
| 区分 | 内々定 | 内定 |
|---|---|---|
| 交わされる時期 | 採用選考後~内定式前 | 内定通知書・誓約書交付後 |
| 法的拘束力 | 原則として低い | 原則として労働契約成立 |
| 取消リスク | 低いが説明は必要 | 高リスク(解雇と同等扱い) |
⚖ 最高裁による「内定」の法的性質(始期付解約権留保付労働契約)
内定とは、将来の入社を約束する労働契約が成立している状態とされ、
取消す場合には「客観的合理性」と「社会的相当性」が必要です(大日本印刷事件)。
経営悪化を理由とする取消しには、整理解雇と同様の慎重な検討が求められます。
🔍 一方、「内々定」は労働契約が未成立と判断された事例も
電電公社近畿電通局事件(最高裁)では、
「内々定は学生の囲い込みに過ぎず、確定的な法的拘束力を持たない」と判断。
つまり、内々定段階では、状況によっては取消しが可能とされています。
🔎 経営悪化による「内々定取消」は可能か?
| 判断項目 | 実務での考え方 |
|---|---|
| 労働契約の成立有無 | 内々定なら未成立の可能性大 |
| 経営悪化の程度 | 一時的か、採用が不可能なレベルか |
| 説明・誠実対応 | 書面で理由を説明し、謝意・補償等を検討 |
🏢【事例】内々定を取り消した介護事業A社のケース
介護事業A社:4月採用予定の新卒3名に内々定
→ 売上悪化のため採用人数削減を決定【対応】
・全員に電話と文書で経緯説明
・就職活動再開に必要な推薦状・証明書を提供【結果】
学校側の理解も得られ、トラブルに発展せず
教訓:
「取消し可能か?」よりも
「いかに誠実に対応したか?」が評価される
🚨 注意!こんな対応はNG
| NG対応 | リスク |
|---|---|
| メール1通で一方的通知 | SNS炎上・信用失墜 |
| 理由を告げない取消し | 不誠実 → 損害賠償を問われる可能性 |
| 契約成立後の取消し(内定後) | 解雇扱い → 不当解雇訴訟の危険 |
🗂 企業がやるべき実務対応チェック
✅ 内々定か、すでに内定通知書を交付していないか確認
✅ 経営状況の説明と謝意を伝える
✅ 必要に応じて補償や推薦書を用意
✅ 学校(キャリアセンター等)とも連携
✅ まとめ
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 内々定は取り消せる? | 状況により可能(労働契約未成立の場合) |
| 内定は? | 原則不可(合理性・相当性が必要) |
| 経営悪化ならOK? | 整理解雇並みの慎重判断が必要 |
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