~DX・新規事業の人材育成に活用できる支援制度~
近年、「事業の多角化」や「デジタル化」を進める企業が増えています。
そんな中、厚生労働省が実施している「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」は、
新しい分野で必要となるスキルを習得させるための訓練費用を支援する制度です。
この記事では、制度のポイントや活用事例をわかりやすく解説します。
制度の概要
この助成金は、企業が雇用する労働者に対して、
新たな分野で必要となる知識・技能を習得させる職業訓練(OFF-JT等)を行った場合に、
訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を国が助成するものです。
助成率・助成額
| 区分 | 経費助成率 | 賃金助成額(1人1時間あたり) | 年度上限 |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 75% | 1,000円 | 1事業所あたり1億円 |
| 大企業 | 60% | 500円 | 同上 |
👉 対象となる訓練は 10時間以上のOFF-JT。
オンライン研修・eラーニング形式も認められています。
対象となる訓練の分野
以下のようなテーマが対象となります。
- 事業展開に伴う訓練
新しい事業やサービス展開に向けたスキル習得
例:飲食業が「デリバリー部門」を新設する際の研修など - DX対応訓練
デジタル技術・データ分析・システム運用などの訓練
例:建設業で3D設計やICT施工技術を導入するための教育 - GX対応訓練
省エネや脱炭素、環境対応に関する技術訓練
例:製造業で環境負荷低減のための新技術を学ぶ研修
支給の主な条件
- 職業能力開発推進者を選任
人材育成の責任者を社内で選任しておくこと。 - 事業内職業能力開発計画を策定・周知
従業員に訓練計画を明示しておくこと。 - 訓練経費は事業主が全額負担(後払い助成)
- 訓練開始日の6か月前~1か月前までに計画届を提出
- 対象者は雇用保険被保険者であること
実際の活用事例
| 業種 | 訓練内容 | 訓練時間 | 助成金額 | 効果 |
|---|---|---|---|---|
| 運送業 | 第二種普通免許取得 | 38.5時間 | 約19万円 | 福祉タクシー部門を創設。地域の高齢者送迎事業を開始。 |
| 医療法人 | 児童発達支援管理責任者研修 | 40時間 | 約34万円 | 新たに児童発達支援事業を開設し、福祉分野へ進出。 |
| IT企業 | UI/UXデザイン研修 | 228時間 | 約59万円 | 新たなデザイン部門を立ち上げ、提案力を強化。 |
💡 ポイント:
実際に「新しいサービスや部門を立ち上げた」企業の訓練が多く採択されています。
「新規事業」「デジタル化」「業務転換」などがキーワードです。
よくある質問(Q&A)
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 同じ訓練を別の社員が受けても対象になる? | 内容が事業展開やDX・GX推進に資するものであれば対象です。 |
| 訓練後に事業展開を行わなかった場合は? | 3年以内に実施予定であれば対象。結果として行わなくても返還は不要です。 |
| 定額制オンライン講座も対象? | 併用不可。定額制サービス単独での訓練のみ助成されます。 |
| 所定労働時間外に訓練を行う場合は? | 所定外の時間は賃金助成の対象外です。労働条件通知書に明記が必要です。 |
申請時の注意点(実務担当者向け)
- 計画届は訓練開始の1か月前までに提出が必要。
訓練開始後の申請は認められません。 - 助成金は後払い。
訓練経費は一度、企業側で立て替えます。 - 賃上げ加算あり。
訓練修了後に賃金を5%以上上げると助成率アップ。 - 定額制訓練は年間3回まで。
まとめ
この助成金は、
💡「新しいことに挑戦したいけれど、人材育成コストが心配…」
という企業にとって非常に心強い制度です。
DX推進や新事業立ち上げを計画している企業は、
早めの計画届の提出と訓練設計が成功のカギになります。
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