2025年10月から、健康保険の被扶養者認定要件が一部改正されます。
これにより、「年収の壁」を気にして働き控えしていた19歳以上23歳未満の家族も、扶養の範囲内で収入を増やしやすくなります。
今回は、この改正内容と企業が実務で対応すべきポイントを、社労士の視点からわかりやすく解説します。
1.改正の背景|なぜ見直されたのか
少子高齢化による人手不足が深刻化する中で、「年収の壁」による就業調整(扶養から外れないように勤務時間や収入を調整する行動)が問題視されています。
特に学生アルバイトやフリーターの若年層では、親の健康保険の扶養に入っているために「働きすぎると保険料負担が発生する」といった理由で、シフトを減らすケースも見られました。
こうした状況を受け、令和7年度税制改正と連動して、健康保険上の認定要件も緩和されました。
2.改正のポイント|「130万円未満」→「150万円未満」に
対象となる家族
- 12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満
- 被保険者(親など)の配偶者以外
- 学生・就業中など、在学の有無は問いません
改正内容
- 年間収入要件が 130万円未満 → 150万円未満 に引き上げ
- 適用は 2025年10月1日以降の被扶養者認定から
※年間収入とは「今後1年間の収入見込額」を指します。
給与収入のほか、年金・手当・出産手当金なども含まれます。
3.事例で確認|どんなときに新基準が適用される?
事例①:大学生アルバイトの場合
- 被扶養者:21歳の大学生(アルバイト月収12万円)
- 年間収入見込:144万円
- 扶養認定日:2025年10月5日
→ 年間収入150万円未満のため、引き続き扶養内で認定可能。
事例②:既に扶養に入っているケース
- 現在扶養中の子(22歳)の年収見込が145万円
- 認定日は2024年10月
→ 2025年10月以降も、150万円未満であれば扶養継続可能。
ただし、150万円を超える見込みになった場合は、**被扶養者削除の手続き(非該当届)**が必要になります。
事例③:23歳を超える年の扱い
- 22歳の年は「150万円未満」までOK
- 翌年(23歳の年)は「130万円未満」に戻るため要注意です。
4.企業が対応すべき実務ポイント
(1)周知・社内告知を行う
19〜23歳の家族を持つ従業員がいる場合、早めに社内で告知しましょう。
これまで扶養に入れなかった家族を新たに申請できる可能性があります。
また、若年パート・アルバイトが「扶養の範囲で働ける時間が増える」ことを伝えることで、人手不足の緩和にもつながります。
(2)書式や申請フォームの見直し
被扶養者申出書や社内システム上のフォームに、新しい収入基準(150万円未満)を反映させましょう。
(3)扶養認定日を確認
どの基準を適用するかは届出日ではなく、扶養認定日で判断します。
2025年10月1日以降の認定であれば、新基準を適用します。
(4)一時的な収入増への配慮
アルバイトなどで一時的に150万円を超えても、
「年収の壁支援強化パッケージ」に基づき、事業主証明を提出することで扶養継続が可能な場合があります。
5.まとめ|年収の壁を正しく理解し、早めの対応を
この改正は、若年層の就業促進を目的とした「年収の壁」見直しの一環です。
労務担当者は、
- 新しい基準(150万円未満)
- 適用時期(2025年10月1日以降)
- 年齢基準(19歳以上23歳未満)
を正確に押さえ、手続きの漏れがないようにしましょう。
📌参考リンク
- 国税庁「専門用語集(特定扶養親族)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/yogo/senmon.htm
✅まとめ(ポイント)
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用開始日 | 2025年10月1日 |
| 対象 | 19歳以上23歳未満の被扶養者(配偶者除く) |
| 年収基準 | 150万円未満(改正前:130万円未満) |
| 判断基準日 | 扶養認定日(届出日ではない) |
| 学生か否か | 問わない |
| 翌年以降 | 23歳を超える年は130万円基準に戻る |
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