近年、企業の社会的責任(CSR)や SDGs の広がりにより、従業員のボランティア活動への関心が高まっています。
しかし、
- 「参加したいが、時間がない」
- 「業務を休んで行くのは難しい」
といった理由から、実際に参加できないケースが多いのが現状です。
そこで注目されているのが、従業員の社会貢献活動を支援する 「ボランティア休暇制度」 です。
厚生労働省のリーフレットでも推奨されており、企業メリットも大きい制度のひとつです。
この記事では、
✓ ボランティア休暇制度とは何か
✓ 企業側のメリット
✓ 就業規則にどう書けばよいか
✓ 実際の導入事例
✓ 中小企業が導入する際のポイント
を、社労士がわかりやすく解説します。
1. ボランティア休暇制度とは?
従業員がボランティア活動を行うために取得できる「特別休暇」の一つです。
厚労省の資料では次のような活動を対象としています。
■ 対象となる主なボランティア活動
- 地域貢献活動
- 社会貢献活動
- 自然・環境保護活動
- 災害復興支援活動
近年は「子ども食堂」「高齢者の買い物支援」「フードバンク活動」など、地域での身近な活動も増加しています。
2. なぜ今、ボランティア休暇制度が求められているのか?
厚労省リーフレットでは次の点が示されています。
■ 社会的背景
- 社会貢献活動への関心が急上昇
- 参加したくても「時間がない」という課題
- 年次有給休暇だけでは対応しづらい
- 従業員の成長・多様な経験を企業が支援できる
とくに災害支援・環境保護など、社会的意義の大きい活動が増えたことで「企業として応援する姿勢」が求められています。
3. ボランティア休暇制度の導入状況(統計)
厚労省資料(3ページ目/によると、
■ 企業の導入率
- 導入している企業:6.5%
- 導入予定・検討中:15.9%
- 合計 22.4%が前向き
さらに、導入企業の 85.2%は有給扱い としています。
まだ少数派ですが、社会貢献・SDGs を重視する企業を中心に導入が急増しています。
4. ボランティア休暇制度の導入メリット(企業側)
厚労省資料(2〜3ページ/では、企業のメリットが明確に示されています。
① 企業イメージの向上
東日本大震災以降、多くの企業が CSR の一環として注目。
社会貢献活動に積極的な企業は、採用面でもプラスに働きます。
② 人材の成長・育成に効果
ボランティアを通じて…
- コミュニケーション能力
- リーダーシップ
- 問題解決能力
- 多様な価値観への理解
が身につき、企業にも還元されます。
③ 社員の帰属意識・貢献意欲の向上
会社が活動を後押しすることで「応援されている」という感覚が生まれ、エンゲージメント向上につながります。
5. 導入企業の実例(アミタホールディングス社)
厚労省資料に掲載されている事例(3ページ目)。
■ 導入の背景
- 社会課題に関心の高い従業員が多かった
- 業務外で得た経験を会社にも活かせると判断
- 年20日、半日単位で取れる「ソーシャル・タイム」を導入
■ 実際の活動
清掃ボランティア、子ども食堂、高齢者の買い物支援など
■ 従業員の声(抜粋)
- 他部署のメンバーと交流ができた
- 農作業を通じて新しい視野が広がった
- 他業種の参加者と接し、大きな刺激になった
→ ボランティアを通じた社内交流・新たな気づきが生まれている点が特徴的です。
6. 就業規則の記載例(厚労省案)
厚労省の記載例(3ページ目/)をもとに、実務で使いやすい形にアレンジしています。
【就業規則記載例(社労士アレンジ版)】
(ボランティア休暇)
第○条
- ボランティア休暇の対象となる活動は、以下に掲げる日本国内で行われるものとする。
① 地域貢献活動
② 社会貢献活動
③ 自然・環境保護活動
④ 災害復興支援活動 - ボランティア休暇を取得できる者は全従業員とする。ただし、休職中、育児・介護休業中の者は対象外とする。
- 取得申請は開始日の1か月前までに会社所定の様式で行い、会社の許可を得るものとする。
- 年間の取得上限は○日とし、賃金は(有給/無給)とする。
- 取得後は、所定の様式により活動内容の報告書を提出するものとする。
7. 中小企業が導入する際のポイント(社労士の実務アドバイス)
① 対象となる活動を「広すぎず、狭すぎず」明確に
→ 災害支援・地域活動・子ども食堂など、企業の実情に合わせて設定。
② 有給か無給かを検討する
- 人員が限られる小規模企業は「無給+半日単位」も選択肢
- 採用強化したい企業は「有給」で差別化も可能
③ 年間の取得上限を決める
一般的には 1〜5日 の範囲で設定されることが多いです。
④ 活動報告を求める
制度の透明性を保ち、「ただの休暇」にしないためにも重要。
⑤ 助成金の活用
厚労省の「働き方改革推進支援助成金」で一部費用が補助される場合があります(資料4ページ/)
8. 【実例】中小企業での導入シーン(社労士が見た現場)
■ 事例①:介護事業A社(従業員20名)
- 災害ボランティアに参加したい社員の要望を受け導入
- 年2日、無給で設定
- 活動報告書の提出を必須とし、社内チャットで共有
→ 社員のモチベーション向上につながり、離職率も改善
■ 事例②:製造業B社(従業員80名)
- 地元の環境美化活動に参加する文化があった
- 年3日、有給で導入
- 新卒採用の説明会でアピールでき、応募者が増えた
→ CSRとして企業価値向上に寄与
9. まとめ:小さな企業でも取り組める“価値ある制度”
ボランティア休暇制度は
従業員の成長 × 社会貢献 × 企業価値向上
を同時に実現できる制度です。
中小企業でも負担を抑えながら導入可能で、
「働きやすい職場づくり」の一歩として非常に効果的です。
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