労務管理

【社労士が解説】自己都合退職と会社都合退職の判断基準 ひらおか社会保険労務士事務所

〜離職票の記載ミスはトラブルの元!正しい判断ポイントを徹底解説〜

退職時に必ずと言ってよいほど問題になるのが、
「自己都合退職なのか」「会社都合退職なのか」 の判断です。

この区分は、労働者の失業給付(待機期間・給付制限・受給額)に大きく影響し、
会社側も従業員とのトラブルにつながりやすいポイントです。

この記事では、企業が判断すべき基準と、離職票の記載で特に注意すべき点を、社労士目線でわかりやすく解説します。


1. 自己都合退職とは

労働者の個人的な事情で退職する場合を指します。

▼ 代表的な理由

  • 転職
  • 家庭の事情
  • 職場が合わない・人間関係の不調
  • 業務内容への不満
  • 将来のキャリアアップ
  • 体調不良だが、治療のため自ら申し出て退職した場合

いずれも「退職を申し出たのが労働者」であることが前提です。


2. 会社都合退職とは

会社側の事情や責任により労働者が離職する場合を指します。

▼ 代表的な理由

  • 解雇(懲戒解雇を含む)
  • 倒産
  • 事業所の廃止
  • 配置転換などで通勤困難となり退職せざるを得ない
  • 不利益変更に耐えられず退職
  • 会社が希望退職を募集し応募した場合

▼ 実務で重要:形式が自己都合でも会社都合となるケース

例えば以下のような「労働者が退職せざるを得ない正当な理由」があるとき、
形式上は“自己都合”で辞めたとしても、実質は会社都合として扱われる可能性があります。

  • 長時間労働・過重労働
  • 賃金未払い
  • ハラスメント(パワハラ・セクハラ・モラハラ)
  • 労働条件の一方的変更
  • 雇止め(更新期待がある場合)

3. 退職勧奨に応じた場合は「会社都合」

会社が退職を促し、労働者がその勧奨に応じて退職した場合、
離職票上は会社都合(具体的には「勧奨退職」扱い) となります。

「本人の申し出で辞めたから自己都合では?」
という企業側の誤解が非常に多い点に注意が必要です。


4. 会社が判断を誤るとどうなる?

  • 離職票の記載を企業が「自己都合」にすると、
    後から労働者がハローワークへ異議申立てを行い、
    会社へ事実確認の照会が来ることがあります。
  • 誤った記載を続けると労働問題に発展し、
    トラブル → 労基署・ハローワーク対応 → 信頼失墜
    という流れになることも珍しくありません。

5. 離職票の記載時に必ず確認すべきポイント

離職票(離職証明書)の「離職理由欄」は最重要項目です。

▼ 記載時のルール

  1. 自己都合か会社都合かを正確に選択する
  2. 該当する番号を選ぶ(11・21・31など)
  3. 具体的事情を簡潔に記載する(特に会社都合)

▼ 具体的事情の書き方ポイント

  • 事実を時系列で簡潔に
  • 感情ではなく、客観的事実のみ
  • ハラスメント・賃金未払い・過重労働などは必ず明記
  • 退職勧奨の場合は「退職勧奨に応じた」と明記

離職理由が曖昧だと、後でハローワークから再確認が入る可能性が高まります。


6. 【実務で使える事例】


◆ 事例①:本人は「退職願」を提出したが、パワハラが原因

→ 判断:会社都合(特定理由離職者・正当な理由のある自己都合)

▼ 背景

上司から継続的な叱責があり、精神的に限界を感じて本人が退職願を提出。

▼ 離職票の書き方

  • 離職理由:パワハラが原因で退職せざるをえなくなった
  • 離職区分:会社都合(退職勧奨に類似する扱い)

企業側が「形式は自己都合だから…」と扱うのはNG。


◆ 事例②:会社が人員整理のため「希望退職」を募集

→ 判断:会社都合

希望退職は「自己都合に見える」ものの、実質は会社都合。
募集要項・退職条件・説明資料などは後日トラブル防止のため保管必須。


◆ 事例③:無断欠勤が続き、自然退職扱いにしたい

→ 判断:基本は会社都合 or 解雇として扱うべきケースが多い

自然退職は法的に存在しないため注意。

  • 出勤命令を出す
  • 連絡を繰り返し行う
  • それでも出社しなければ解雇の手続きへ

解雇の場合は「会社都合(解雇)」として離職票に記載。


◆ 事例④:労働者が転職のため自ら退職

→ 判断:自己都合退職

離職票の記載は以下のように簡潔でOK。

  • 離職理由:転職のため本人が退職を申し出た
  • 区分:自己都合退職

◆ 事例⑤:更新ありと期待させていた契約社員を突然雇止め

→ 判断:会社都合(特定受給資格者)

雇止めは、本人に更新期待がある場合、実質解雇として扱われます。


7. まとめ:最も重要なのは「実態に基づく判断」と「正確な記載」

  • 自己都合か会社都合かは形式ではなく実態で判断する
  • ハラスメント・賃金未払い・長時間労働など「退職せざる得ない理由」があれば会社都合
  • 離職票は「具体的事情を正確に記載」すること
  • 記載次第で企業の信頼や法的リスクにも影響

少しのミスが企業トラブルを生むため、離職票の作成は社労士が最も慎重に扱う業務の一つです。


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