労務管理

休職期間が満了しましたが、復職の申出がない場合、雇用契約を終了させてもよいですか?/ひらおか社会保険労務士事務所

―「休職満了=自動退職」は要注意―

従業員が私傷病により休職していたものの、
休職期間が満了しても復職の申出がない――
このような場面で、

「就業規則に“休職期間満了後、復職できない場合は退職”と書いてあるから、
そのまま雇用契約を終了しても問題ないのでは?」

と考える経営者の方も少なくありません。

しかし、結論から言うと注意が必要です。


1.就業規則に定めがあっても「自動退職」にはなりません

就業規則に

「傷病休職期間満了後に復職できない場合は退職とする」

という定めがあったとしても、
休職期間満了をもって自動的に雇用契約が終了するわけではありません。

裁判例では、いわゆる「休職満了後退職」について、

  • 形式は「退職」
  • 実質は 解雇と同視される

と判断されています。

そのため、次の法律が適用されます。

  • 労働契約法 第16条(解雇権濫用法理)
  • 労働基準法 第20条(解雇予告・解雇予告手当)

2.「休職満了後退職」でも解雇と同じハードルがあります

休職満了後に雇用契約を終了させるには、

  • 客観的に合理的な理由
  • 社会通念上の相当性

が必要です。
これらを欠く場合、その終了は無効と判断されるリスクがあります。

また、

  • 30日以上前の解雇予告
    または
  • 30日に満たない場合は、その日数分の解雇予告手当の支給

も必要になります。


3.業務上の傷病の場合は「解雇制限」に注意

休職の原因が、
業務上の傷病(労災)と認定される場合には、

  • 労働基準法 第19条(解雇制限)

が適用されます。

この場合、
休職満了後退職であっても、原則として解雇はできません。

4.裁判所が重視する判断ポイント(実務で重要)

裁判所は、休職満了後退職の有効性を判断する際、
主に次の点を総合的に見ています。

① 休職期間は、傷病の治癒を考慮して相当な長さであったか
② 元の業務より軽易な業務
 短時間勤務業務量の調整(リハビリ出勤含む)でも就労は困難か
③ 主治医や産業医の医学的意見を踏まえているか
④ 休職延長やリハビリ出勤をしても、回復の見込みがなかったか
⑤ 退職させることに、制度趣旨に反する不正な目的がないか

特に②③は、企業側の対応姿勢として厳しく見られます。


5.復職の申出がない=退職OK、ではありません

復職可能かどうかについては、
原則として従業員本人が復職可能性を主張する必要があります。

しかし、

  • 「休職期間満了時に復職の申出がなかった」
  • 「会社から特に確認をしていない」

という事情だけで、
自動的に休職満了後退職が有効とされる可能性は低いのが実務です。


6.実務対応としておすすめの進め方

トラブルを避けるため、次の対応をおすすめします。

✅ ① 休職満了日の30日以上前に通知

  • 休職期間の満了日
  • 満了後の取扱い
  • 復職希望の有無

書面で明確に伝える

✅ ② 復職意思・就労可能性の確認

  • 主治医の診断書の提出依頼
  • 必要に応じて産業医面談

✅ ③ 配慮措置の検討記録を残す

  • 軽易業務
  • 短時間勤務
  • リハビリ出勤
    などを検討した経緯を記録化

7.【事例】よくあるトラブルケース

事例
私傷病で1年間休職していたAさん。
休職期間満了日になっても、会社は特に連絡をせず、
「就業規則どおり」として退職扱いに。

その後、Aさんから
「復職の意思はあった」「解雇は無効だ」
と主張され、労働審判へ。

👉 会社は

  • 復職意思の確認をしていない
  • 医師の意見を確認していない

として、退職無効と判断される可能性が高くなりました。


8.まとめ(経営者の方へ)

  • 休職満了=自動退職 ではありません
  • 形式が「退職」でも、実質は解雇扱い
  • 解雇と同様の慎重な手続きが必要
  • 事前通知・意思確認・記録が最大の防御策

休職対応は、
「手続きを誤ると大きな労務リスクになる分野」です。

📩 休職・復職・退職対応でお悩みの方へ

個別事案によって判断が分かれることも多いため、
実務対応に不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。

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