判例

【裁判例解説】復職後わずか10日で自然退職に

―「休職期間通算規定」が厳格に適用された実務上の注意点―
|ひらおか社会保険労務士事務所

はじめに(経営者の皆さまへ)

メンタルヘルス不調による休職・復職の判断は、
現在、多くの企業にとって避けて通れない重要テーマです。

特に悩ましいのが、

  • 復職させたものの、すぐに再び不調となった場合
  • その後、雇用関係をどう整理すべきか

今回ご紹介する裁判例は、
「復職後わずか10日程度の勤務」でも、休職期間通算規定を適用し、自然退職を有効と判断した点で、実務に大きな示唆を与えています。

1.裁判例の概要(東京地裁 令和6年12月10日判決)

本件は、外資系証券会社に勤務していたIT専門職の社員が、

  • メンタルヘルス不調で休職
  • 復職後、短期間で再び就労不能となり
  • 就業規則に基づき「休職期間満了による自然退職」とされた

これに対し、労働者が
「自然退職は無効である」と訴えた事案です

2.会社側が勝訴したポイント①

「職種限定合意」が認められた

裁判所は、次の事情から
職務内容をユーザーサポート業務に限定する合意があったと認定しました。

  • 専門職としての中途採用
  • 職務記述書を提示したうえでの募集
  • 労働契約書に職務記述書が添付されていた
  • 労働者の経歴も当該業務に特化していた

👉 その結果、
「他の軽易業務への配置転換を検討する義務はない」
と判断されました。


3.会社側が勝訴したポイント②

復職後も「治癒していなかった」と判断

主治医は「復職可能」とする診断書を出していましたが、
裁判所はそれを鵜呑みにしませんでした。

重視されたのは、次のような客観的事実です。

  • 復職後、業務負荷を25%まで軽減しても業務が遂行できなかった
  • 職場で突発的な異常行動が見られた
  • 復職直前に抗うつ薬の処方量が倍増していた

👉 これらから、
「表面的には復職しているが、実質的には治癒していない」
と判断されました

4.会社側が勝訴したポイント③

「休職期間通算規定」の厳格適用

本件就業規則には、次のような規定がありました。

復職後、同一または関連する傷病で再び休職する場合、
休職期間は通算する

裁判所は、

  • 復職後の不調は、休職前と「同一または関連する傷病」
  • すでに休職可能期間(93日)を使い切っている

として、
休職期間満了 → 自然退職は有効と判断しました。

復職後、実質10日程度しか勤務していなくても、
この結論は覆りませんでした。


5.【実務事例】中小企業でも起こりうるケース

事例:IT企業(専門職採用)

  • システム担当として中途採用
  • メンタル不調で休職 → 復職
  • 軽易業務に配慮するも、短期間で再不調

👉 就業規則に
・休職期間通算規定
・自然退職規定
が整備されていたため、トラブル化を回避。

規程整備の有無が、結果を大きく左右しました。


6.経営者が押さえるべき実務ポイント

今回の裁判例から、特に重要な点は次のとおりです。

✔ 休職期間通算規定は、有効と判断される可能性が高い
✔ 職務限定合意は、採用段階の資料・契約書が重要
✔ 「診断書」よりも「客観的な勤務実態」が重視される
✔ 復職後の言動・業務状況は必ず記録に残す


7.まとめ

メンタルヘルス対応では、
「配慮していれば大丈夫」という感覚的対応は通用しません。

  • 就業規則の整備
  • 採用時の職務内容の明確化
  • 復職後の客観的記録

これらを事前に整えているかどうかが、
いざ裁判になったときの明暗を分けます。


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