労務管理

業務中のケガでマイナ保険証を使った場合

協会けんぽの7割を払わないと労災給付は受けられない?
(ひらおか社会保険労務士事務所)

「業務中のケガなのに、病院でマイナ保険証を出してしまった」
「あとから協会けんぽから“医療費7割分を支払ってください”という通知が来た」

最近、マイナ保険証の普及により、このような相談が急増しています。
結論から言うと、原則としては“支払いが必要”ですが、
例外的な救済措置もあります。

今回は、経営者の方向けに
業務中のケガで健康保険を使ってしまった場合の正しい対応を、実務目線で解説します。

1.そもそも業務中のケガは「労災保険」が原則

業務中や通勤途中のケガ・病気は、
健康保険(協会けんぽ等)ではなく、労災保険で対応するのが原則です。

そのため本来は、

  • 病院では「労災です」と申し出る
  • 労災指定医療機関で治療を受ける

という流れになります。


2.マイナ保険証を使ってしまった場合、どうなる?

業務中のケガにもかかわらず、
誤ってマイナ保険証(健康保険)を使って受診した場合

  • 医療費の 7割 … 協会けんぽが立替払い
  • 医療費の 3割 … 本人が窓口で支払い

という形になります。

後日、労災と認定されると、
協会けんぽが負担した7割分を返してほしい
という請求が届くことがあります。


3.【原則】7割分を支払わないと労災給付は受けられない?

▶ 原則:はい

協会けんぽが立替えた医療費(7割分)について、
協会けんぽへの支払いが完了しないと、原則として労災保険からその分の給付は受けられません。

これは、
👉 二重給付(健康保険と労災保険の重複)を防ぐためです。


4.【例外】支払前でも労災給付が認められるケース

ただし、次のような場合は例外があります。

✔ 多大な経済的負担が生じるとき

  • 高額な医療費で、一括支払いが困難
  • 生活に大きな支障が出る

このような事情がある場合には、
協会けんぽへの支払いが完了する前でも、労災保険から給付が行われることがあります。


5.【重要】委任により「直接精算」できるケースも

本人が委任することで、

👉 労災保険から協会けんぽへ、直接医療費が支払われる
という調整が行われる場合があります。

この場合、

  • 被災者本人が立替払いをしなくて済む
  • 経済的負担を軽減できる

というメリットがあります。


6.【事例】実務でよくあるケース

❌ 事例①:相談せず放置してしまったケース

  • 業務中の転倒事故
  • マイナ保険証で受診
  • 協会けんぽから7割請求が届く

「会社に迷惑をかけたくない」と放置
👉 労災給付が進まず、本人の負担が長期化


✅ 事例②:早めに相談して解決したケース

  • 同様にマイナ保険証で受診
  • すぐに会社・社労士へ相談
  • 労基署に事情を説明

👉 委任により労災保険から協会けんぽへ直接支払
👉 本人の立替負担なしで解決


7.経営者が実務で注意すべきポイント

✔ 業務中のケガは「必ず労災」
✔ マイナ保険証を使った場合の対応を社内で共有
✔ 従業員が自己判断で抱え込まない体制づくり
✔ 支払が難しい場合は、早めに労基署へ相談

この対応を誤ると、

  • 従業員トラブル
  • 会社への不信感
    につながるおそれがあります。

8.まとめ|迷ったら「労基署・専門家」へ早めに相談を

業務中のケガでマイナ保険証を使ってしまった場合、

  • 原則:協会けんぽの7割分を支払わないと労災給付は進まない
  • 例外:経済的事情等により、支払前でも給付されることがある
  • 委任により、直接精算できるケースもある

という整理になります。

放置せず、早めの相談が何より重要です。


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根拠法令・参考情報

  • 平成29年2月1日 基補発0201第1号
    (労災認定された傷病等に対して、労災保険以外から給付等を受けていた場合の調整)