労務管理

【実務解説】

歩合給制の場合、残業代は払わなくてもよい?

ひらおか社会保険労務士事務所

営業職や販売職などで導入されることの多い歩合給制
経営者の方から、次のようなご相談をよくいただきます。

  • 「歩合給なら残業代はいらないのでは?」
  • 「成果で払っているから、時間管理は不要?」
  • 「固定給がない場合はどう計算する?」

結論からお伝えします。

👉 歩合給制であっても、残業代の支払義務は免除されません。

本記事では、法的な考え方と実務上の計算方法を、事例を交えて解説します。


1.結論|歩合給制でも残業代は必要です

労働基準法では、以下の労働について割増賃金の支払いを義務づけています。

  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働
  • 法定休日労働
  • 深夜労働(22時~5時)

これは、賃金形態を問いません

👉
歩合給制であっても、時間外・休日・深夜労働があれば残業代は必須です。


2.歩合給制でも「時間管理」は必要

「成果給だから労働時間を管理しなくてよい」という誤解は非常に多いですが、
時間管理が不要になることはありません。

  • 出退勤時刻の把握
  • 実労働時間の管理
  • 時間外・休日労働の把握

これらは、歩合給制であっても必須です。


3.歩合給に対する残業代の計算方法(基本)

歩合給部分の割増賃金は、次の手順で計算します。

① 歩合給の時間単価を算出

歩合給額 ÷ その算定期間における総労働時間数

② 割増賃金額を算出

時間単価 × 時間外労働時間数 × 割増率(25%以上)

👉
歩合給部分についても、必ず割増率をかける必要があります。

4.【実務事例①】完全歩合制の営業職

ケース

  • 基本給なし、完全歩合制
  • 月の歩合給:40万円
  • 総労働時間:200時間
  • 時間外労働:20時間

計算

  • 時間単価:40万円 ÷ 200時間 = 2,000円
  • 割増賃金:2,000円 × 20時間 × 0.25 = 10,000円

この1万円は別途支払いが必要

📌
「歩合に全部含まれている」という扱いは原則NGです。


5.【実務事例②】固定給+歩合給の場合

ケース

  • 固定給:20万円
  • 歩合給:10万円
  • 時間外労働あり

実務上の注意点

  • 固定給部分:通常どおり時間外割増を計算
  • 歩合給部分:上記の歩合給専用の計算方法で割増を計算

👉
固定給と歩合給を分けて計算する必要があります。


6.「残業代込み歩合」は原則NG

次のような運用は、未払い残業代のリスクが高いため注意が必要です。

  • 「歩合給に残業代も含む」としている
  • 割増率を考慮していない
  • 就業規則・契約書に明確な定めがない

歩合給に残業代を含める場合でも、
法定要件を満たした明確な設計が必要です。


7.経営者が注意すべきポイントまとめ

✅ 歩合給制でも残業代は必須
✅ 労働時間管理は不可欠
✅ 歩合給部分にも割増賃金が必要
✅ 固定給がある場合は分けて計算
✅ 就業規則・賃金規程の整備が重要


まとめ|歩合給制こそ「設計」と「管理」が重要です

歩合給制はモチベーション向上に有効な制度ですが、

  • 残業代未払い
  • 時間管理不十分
  • 契約内容の不明確さ

があると、後から大きな労務トラブルにつながります。

制度導入時・見直し時には、
法令に沿った賃金設計が不可欠です。


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根拠法令

  • 労働基準法 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)