歩合給制の「保障給」はいくらに設定すればよいですか?
ひらおか社会保険労務士事務所
営業職や販売職などで導入されることの多い歩合給制(出来高払制)。
その際、経営者の方から次のようなご相談をよくいただきます。
- 「保障給はいくらにすればいいのか分からない」
- 「最低賃金を下回らなければ問題ない?」
- 「行政的な目安はあるの?」
結論からお伝えすると、
保障給の金額は法律で明確に決められてはいませんが、実務上の“目安”は存在します。
本記事では、法令・行政解釈を踏まえながら、
トラブルにならない保障給の考え方を解説します。
1.保障給とは何か?
保障給とは、出来高(成果)が少ない場合でも、労働時間に応じて最低限支払われる賃金のことです。
労働基準法では、出来高払制について、
使用者は、労働時間に応じて一定額の賃金を保障しなければならない
と定められています(労基法27条)。
👉
成果がゼロでも「賃金ゼロ」は認められません。
2.保障給の金額は法律で決まっている?
結論:具体的な金額は法律では決められていません
労働基準法には、
- 保障給はいくら以上にしなければならない
という明確な金額基準はありません。
しかし、だからといって自由に決めてよいわけではありません。
3.最低限守るべきライン|最低賃金以上
最低賃金法により、
👉 すべての労働者に対し、最低賃金額以上の支払いが必須
です。
そのため、保障給は、
- 時給換算
- 日給換算
- 月給換算
いずれの形であっても、
最低賃金額を下回ってはいけません。
4.行政解釈による「実務上の目安」
行政通達(昭和63年3月14日 基発150号)では、
保障給について次のように示されています。
常に通常の実収賃金を余りへだたらない程度の収入が保障されるように
保障給の額を定めるべきである
そのうえで、実務上は、
👉 平均賃金のおおむね6割程度
を目安とすることが望ましい、とされています。
📌
これは「義務」ではありませんが、
行政指導・是正の場面で参考にされる重要な考え方です。
5.【実務事例①】営業職(完全歩合制)
ケース
- 営業職(基本給なし・歩合給のみ)
- 月によって成果のばらつきが大きい
問題点
- 成果が出ない月は、最低賃金を下回るおそれあり
対応
- 時給換算で最低賃金を上回る保障給を設定
- 実績平均との差が大きくなりすぎない水準に調整
👉
「最低賃金+α」の保障給設計がポイント
6.【実務事例②】固定給+歩合給の場合
ケース
- 固定給:10万円
- 歩合給:成果に応じて支給
- 労働時間はフルタイム
実務ポイント
- 固定給部分が保障給の役割を果たしているか確認
- 固定給が最低賃金・6割目安を下回らないか検証
📌
名目上「固定給」があっても、
金額が低すぎると保障給として不十分と判断される可能性があります。
7.保障給が低すぎる場合のリスク
保障給の設定を誤ると、
- 最低賃金違反
- 未払い賃金請求
- 労基署からの是正指導
といったリスクにつながります。
特に、
- 「成果が出ないのは本人の責任」
- 「歩合制だから仕方ない」
という考え方は、法的には通用しません。
8.経営者が確認すべきポイントまとめ
✅ 保障給は最低賃金を下回っていないか
✅ 実績賃金と大きく乖離していないか
✅ 労働時間に応じた保障になっているか
✅ 就業規則・賃金規程に明確に定めているか
まとめ|保障給は「低ければいい」ではありません
歩合給制における保障給は、
- 法令遵守
- 従業員の生活保障
- 労務トラブル防止
の観点から、非常に重要な制度設計ポイントです。
「最低賃金さえ守ればいい」と考えず、
実態に即した適切な水準での設定が求められます。
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根拠法令・通達
- 労働基準法 第27条(出来高払制の保障給)
- 最低賃金法 第4条(最低賃金の効力)
- 昭和63年3月14日 基発150号