労務管理

【実務解説】能力不足の従業員が降給に合意しない場合、会社はどう対応すべきか?

ひらおか社会保険労務士事務所


はじめに(経営者の方へ)

  • 思うように成果が出ない
  • 業務ミスが多く、改善が見られない
  • 他の従業員とのバランスが取れない

このような 「能力不足」と感じる従業員について、
「給与を下げたいが、本人が納得しない」
というご相談は非常に多くあります。

結論から言うと、
👉 能力不足を理由とする降給は、無条件ではできません。
対応を誤ると、違法な賃金減額としてトラブルに発展するリスクがあります。


降給の基本ルール(重要)

原則:降給は「労働条件の不利益変更」

賃金は、労働条件の中でも 最も重要な要素です。
そのため、降給は原則として、

  • 本人の合意
    または
  • 就業規則等に基づく正当な手続き

が必要になります。


就業規則がある場合・ない場合の違い

① 就業規則に「具体的な降給規定」がある場合

以下のような定めがある場合は、
合意がなくても降給できる可能性があります。

  • 人事評価制度が明確
  • 評価結果に応じた賃金テーブルが定められている
  • 降給の条件・範囲が具体的

👉 評価制度に基づく客観的・合理的な降給であることが重要です。


② 就業規則の定めがない・曖昧な場合

  • 「能力に応じて賃金を決定する」程度の抽象的規定
  • 降給の基準や手続きが不明確

この場合、
👉 本人の合意なく一方的に降給することは高リスクです。


【事例】実務でよくあるケース

事例①:就業規則に基づき降給できたケース

  • 人事評価制度を導入
  • 評価結果が2期連続で最低ランク
  • 就業規則に「評価結果に応じた降給」規定あり
  • 面談・改善指導を十分に実施

就業規則+評価制度+指導実績が揃っており、適法性が高い


事例②:合意なく降給し、トラブルになったケース

  • 明確な降給規定なし
  • 会社判断で一方的に基本給を減額
  • 従業員が同意せず、不満を表明

労働契約法8条違反として紛争化
➡ 未払い賃金請求に発展する可能性


事例③:降給は断念し、別の対応を取ったケース

  • 能力不足は明らか
  • 本人は降給に強く反対
  • 教育・配置転換を実施
  • 改善が見られず、最終的に契約終了を検討

降給に固執せず、段階的対応を選択


本人が降給に合意しない場合の実務対応

① 能力向上のための教育・指導を行う

  • OJT・研修
  • 具体的な改善目標の提示
  • 記録を残すことが重要

② 公正・客観的な評価を行う

  • 評価基準を明確に
  • 他の従業員との比較可能性
  • 評価結果を本人に説明

③ 労働条件の丁寧な説明

  • なぜ降給が検討されているのか
  • 現在の評価と課題
  • 改善した場合の見通し

④ それでも合意が得られない場合

  • 一方的な降給は避ける
  • 配置転換・業務内容の見直し
  • 最終的には 労働契約の解除(解雇)を含めた検討

※解雇には、より厳格な合理性・相当性が求められます。


法律上のポイント

  • 労働契約法 第8条
    労働条件の変更は、原則として労働者と使用者の合意が必要

👉 降給は「慎重すぎるくらいでちょうどよい」対応が必要です。


まとめ(経営者の方へ)

  • 能力不足=自由に降給できるわけではない
  • 就業規則・評価制度の有無が分かれ目
  • 合意が得られない場合は段階的対応が重要
  • 一方的な降給は、後々のトラブルリスクが高い

「感覚」ではなく「制度と手順」で対応することが、会社を守ります。


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