所定労働時間が8時間の日に、次のような勤務をしたケースを考えてみましょう。
- 2時間遅刻
- 2時間残業
一見すると「プラスマイナスゼロで相殺できるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、給与計算上は遅刻と残業を相殺することは原則できません。
なぜ相殺できないのか?
遅刻による賃金控除と、残業による賃金支給は、別々のプロセスで計算されるべきものだからです。
- 遅刻時間 …「働かなかった時間」として賃金控除
- 残業時間 …「働いた時間」に応じた残業手当の支給
労働基準法上も、これらは性質の異なるものであり、相殺処理は認められていません。
具体的な事例
- 所定労働時間:9:00~18:00(休憩除いて8時間勤務)
- 実労働時間:11:00~20:00(休憩除いて8時間勤務)
- 1日あたりの賃金:16,000円
- 1時間あたりの賃金:2,000円(16,000円÷8時間)
給与計算は以下のようになります。
- 遅刻2時間分の賃金控除
2,000円 × 2時間 = 4,000円控除 - 残業2時間分の賃金支給(法定内残業)
2,000円 × 2時間 = 4,000円支給
結果として、差し引きゼロになりますが、
給与明細は必ず以下のように別々に表示します。
- 遅刻控除 ▲4,000円
- 法定内残業手当 +4,000円
実務で注意すべきポイント
- 実労働時間が8時間を超えた分は必ず割増賃金を支払う必要があります。
- 会社によっては、所定時間を超えた時点で法定外残業扱いとし、割増支給するケースもあります。
- 給与明細は「控除」と「支給」を明確に分けて記載し、透明性を確保しましょう。
まとめ
遅刻と残業は金額上でプラスマイナスゼロでも、相殺処理はNGです。
必ず個別に計算し、正しく給与明細に反映させましょう。
労務管理の正確性は、社員からの信頼にも直結します。
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