~東京地裁 令和6年12月23日判決~
事案の概要
原告は令和4年4月1日付で、条件付き採用期間6か月として渋谷区に採用され、主事に任命されました。
しかし同年12月9日、被告(渋谷区)は能力不足を理由に免職処分としました。
原告はメンタル面の不調で治療を受けていたものの、自己判断で通院を中断。病気休暇を取得後も十分に回復せず、職務遂行能力の低下が続いたこと、公務の効率にも影響を与えたことが考慮されています。
原告はこの免職処分を不服として提訴しました。
裁判所の判断(判旨)
裁判所は、地方公務員法22条に基づく条件付採用制度の趣旨について次のように述べました。
「職員採用の競争試験や選考だけでは職務遂行能力を完全に証明できない。実際に職務を担当させ、能力を実証した上で採用を確定させる制度である。」
その上で、
- 原告の勤務成績を「不良」と評価したことは妥当
- 心身の故障により職務に耐えられないと判断したことも妥当
とし、免職は有効と判断しました。
判決のポイント
- 条件付採用(試用期間)の目的
採用試験で一定の能力が認められても、実務での適性は別問題。職務遂行能力を実証するための期間である。 - 経験者採用の評価基準
新卒採用と異なり、特定業務への即戦力性が求められる。期待されるスキルを欠く場合は能力不足と評価されやすい。 - 評価の透明性
評価が免職ありきではないことを証明するため、日常的な勤務記録や指導内容の保存が重要。
企業向け実務アドバイス
民間企業でも「試用期間」は同様の役割を持っています。裁判所の判断から学べるポイントは以下の通りです。
- 指導履歴の記録
業務改善のためにどのような指導・配慮を行ったかを文書化する。 - 具体的な事実の蓄積
業務上の不具合の内容や、他の従業員・業務全体への影響を明確に記録する。 - 期待値の明示
採用時点で職務内容・期待される成果を具体的に説明しておく。
まとめ
本件は、経験者採用された職員が業務処理速度や遂行能力で他の職員に劣り、免職が有効とされた事例です。
試用期間(条件付採用期間)は、採用の最終決定を下すための重要な評価期間です。
企業としては、能力不足の判断を行う際、客観的な事実と記録に基づく評価体制を整えておくことが、後の紛争予防につながります。
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