ご相談内容
従業員が A支店からB支店へ転勤しました。
A支店に在籍中は月45時間を超える時間外労働をすでに年6回行っています。
この場合、B支店に転勤後も 月45時間を超える時間外労働を6回まで行うことができるのでしょうか?
ポイントとなる法的整理
① 月45時間超・年6回の上限規制
労働基準法第36条第5項では、36協定に基づく時間外労働は、月45時間を超えることができるのは年6回以内とされています。
この規定は「事業場ごとの36協定の内容」を規制するものとされており、従業員が転勤した場合には 通算されない可能性があります。
➡ したがって、B支店において36協定の起算日以降に月45時間を超える時間外労働がなければ、その従業員はB支店でも新たに「年6回」行える可能性があります。
② 100時間未満・月平均80時間以下の規制
一方、
- 月の時間外労働+休日労働を 100時間未満 とする規制
- 過去6か月以内の時間外労働+休日労働を 月平均80時間以内 に抑える規制
これらは「従業員個人の実労働時間」を制限するものです。
そのため、従業員が支店をまたいで転勤した場合でも、通算して適用されると解されています(労働基準法第38条第1項)。
事例
- A支店在籍中に、すでに年6回、月45時間超の時間外労働を実施
- その後、B支店へ転勤
➡ B支店では、新たに年6回まで45時間超の時間外労働が認められる可能性があります。
ただし、直近6か月間における「時間外労働+休日労働」の時間が平均80時間を超える場合や、単月で100時間を超える場合は、転勤後も制限に抵触するため不可となります。
実務での対応ポイント
- 36協定の「年6回ルール」は事業場単位でカウントされる
- 「100時間未満」「月平均80時間以下」の規制は個人単位で通算される
- 転勤者の労働時間管理は、前事業場と情報を引き継ぎ、通算チェックを徹底することが重要
📌 根拠法令・参考情報
- 労働基準法 第36条(時間外及び休日の労働)
- 労働基準法 第38条(時間計算)
- 平成30年12月28日 基発1228第15号(働き方改革関連改正後の労基法の解釈)
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