採用活動において、有料職業紹介事業者(いわゆる人材紹介会社)と契約を結ぶ企業は少なくありません。
契約には法令で必ず記載しなければならない事項(例:職種の範囲、手数料の額や算定方法など)が定められていますが、それ以外にも、実務上トラブルを避けるためにあらかじめ契約書に盛り込んでおくと望ましい事項があります。
本記事では、その具体例と実際のトラブル事例をご紹介します。
契約に盛り込むと望ましい事項
以下の事項は法律上の義務ではありませんが、記載しておくことで後々のトラブル防止につながります。
- 返戻金制度に関する詳細な規定
例:採用後◯か月以内に退職した場合は、手数料の一部を返還する旨。
→ 返戻率や期間を明確化しておかないと、退職時に「返還対象かどうか」で揉めることがあります。 - 手数料の発生条件や支払時期の明確化
例:「採用決定時」に発生するのか、「入社日」に発生するのか。支払期限はいつか。 - 秘密保持に関する具体的な範囲
候補者の個人情報、社内の採用基準・給与水準などを、紹介会社が第三者に漏らさないための規定。 - 転職勧奨の禁止に関する確認
紹介した人材に対して、後日「他社への転職を勧める」行為を禁止する条項。 - 違約金や損害賠償に関する規定
紹介会社の過失でトラブルが発生した場合の責任分担を明確化。
実務での事例
事例①:返戻金を巡るトラブル
ある企業が人材紹介会社を通じて採用した社員が、入社後2週間で退職しました。
契約書には「返戻金制度」の明記がなく、紹介会社は「採用決定時に手数料が発生する」と主張。
最終的に企業側が全額を負担することになり、大きな不満が残りました。
👉 対策:「返戻金制度の有無・内容」を契約書で事前に確認・記載することが不可欠です。
事例②:入社日が延期されたケース
内定者の入社日が2か月延期となった際、紹介会社は「採用決定日」で請求、企業は「入社日」での発生と認識。支払時期を巡って対立しました。
👉 対策:「手数料が発生する時点」や「支払時期」を明確に契約書へ記載することが望まれます。
まとめ
有料職業紹介事業者との契約は、法律で義務づけられている項目だけでは不十分です。
返戻金・手数料・秘密保持・転職勧奨禁止・損害賠償といった事項を盛り込むことで、実務上のトラブルを防止できます。
採用活動は企業の将来を左右する重要なプロセスです。契約書の内容を細かく確認し、安心して人材紹介サービスを活用できるよう備えておきましょう。
根拠法令・参考情報
- 職業安定法 第32条の13(取扱職種の範囲等の明示等)
- 職業安定法施行規則 第24条の5(法第三十二条の十三に関する事項)
- 厚生労働省『職業紹介事業の業務運営要領』
👉 PDFはこちら
✅ 初回相談無料|人材紹介会社との契約チェック・労務相談はこちら
👉 無料相談・お問い合わせはこちら