労務管理

リファラル採用の報奨金は社会保険上「賞与」に該当するのか?

リファラル採用(社員紹介制度)は、採用コストの削減や定着率向上を目的に多くの企業で導入が進んでいます。
この制度では、紹介を行った従業員に「報奨金」を支給するケースがありますが、その取扱いには社会保険上の留意点があります。

社会保険における「賞与」の定義

社会保険制度上の賞与は、健康保険法・厚生年金保険法において次のように定義されています。

「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3か月を超える期間ごとに受けるもの」

つまり、

  • 労働の対償性があるか
  • 3か月を超える期間ごとに支払われるか

この2点が判断の基準となります。

リファラル採用報奨金の取扱い

労働の対償性の判断

社会保険制度上「報酬等」に該当するものは、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるもの とされています。

  • 報酬等に該当する可能性が高いケース
    • 給与規程等に基づいて経常的(定期的)に支払われる
    • 労働協約等に基づき継続的に支給される
  • 報酬等に該当しない可能性があるケース
    • 恩恵的に支給されるもの
    • 臨時的・偶発的に支払われる一時金

支給間隔による判定

  • 採用ごとに都度支給 → 原則「給与(報酬)」として標準報酬月額に算入
  • 3か月を超える期間ごとにまとめて支給 → 「賞与」として取り扱い、賞与支払届の提出が必要

実務上の留意点

1. 就業規則・給与規程への明記

報奨金の支給条件や金額を明確に定めていないと、経常的な報酬かどうかの判断が不明確になります。
規程にきちんと明記しておくことがトラブル防止につながります。

2. 職業安定法との関係

職業安定法第40条では、求人活動に従事する従業員に「賃金以外の報酬を与えてはならない」と規定されています。
報奨金が労働の対償とされる場合、必ず 給与または賞与として処理 しなければ法令違反のリスクがあります。

3. 総合的な判断要素

報奨金が「報酬」か「賞与」に該当するかは、以下の要素を総合的に判断します。

判断要素報酬等に該当する可能性
給与規程等での明記高い
経常的・定期的な支給高い
恩恵的な一時金低い
臨時的・偶発的な支給低い

事例

事例①:都度支給 → 給与扱い

ある企業では、採用成立の都度3万円を報奨金として給与と一緒に支払っていた。
→ 標準報酬月額に含めて処理。

事例②:半年ごとにまとめて支給 → 賞与扱い

別の企業では、紹介人数に応じた金額を半年ごとにまとめて支給していた。
→ 「3か月を超える期間ごと」に該当し、社会保険上の「賞与」として処理。

まとめ

  • 報奨金は「労働の対償」とみなされる可能性が高く、原則として報酬または賞与のいずれかに区分される
  • 支給間隔の違いにより「給与」か「賞与」かが決まる
  • 規程整備と適正処理が不可欠
  • 職業安定法違反を避けるため、必ず賃金体系上の位置付けを明確にすること

根拠法令・参考情報

  • 健康保険法 第3条(定義)
  • 厚生年金保険法 第3条(用語の定義)
  • 職業安定法 第40条(報酬の供与の禁止)
  • 厚労省 令和5年6月27日 事務連絡
    👉 厚生労働省公式資料

📌 実務ワンポイント
リファラル採用の報奨金は、制度設計・規程整備・支給ルール次第で「給与」か「賞与」かが変わります。導入前に必ず労務管理の専門家に確認しましょう。

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