最低賃金のチェックを行う際、「実労働時間で計算した残業代」や「固定残業代を超えた部分」をどのように扱うかは実務で迷いやすいポイントです。
今回は、最低賃金法の規定をもとに整理し、具体的な事例も紹介します。
最低賃金に算入できる賃金・できない賃金
最低賃金法第4条第3項および最低賃金法施行規則第1条では、最低賃金の算定から除外される賃金を明示しています。
最低賃金に算入できないものの例:
- 時間外労働に対する割増賃金(固定残業代を超えた残業代も含む)
- 休日労働に対する割増賃金
- 深夜割増賃金(22時~翌5時の割増部分)
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当
- 臨時に支払われる賃金(賞与など)
👉 つまり、「固定残業代を超えて支払われた残業代」も、最低賃金の基礎には含めることができません。
最低賃金のチェック対象となるのは、あくまでも「通常の労働時間・労働日に対応する賃金(基本給など)」です。
実務での事例
事例①:固定残業代でカバーできたケース
- 基本給:160,000円
- 固定残業代:40,000円(30時間分)
- 実残業時間:25時間
👉 この場合、固定残業代の範囲内で収まっているため、最低賃金の算定は「基本給160,000円」のみで行います。
事例②:固定残業代を超えたケース
- 基本給:160,000円
- 固定残業代:40,000円(30時間分)
- 実残業時間:40時間(超過10時間分で20,000円支給)
👉 この場合、超過分20,000円は「時間外割増賃金」であり、最低賃金の基礎には含まれません。
したがって、最低賃金をクリアしているかどうかの判断は「基本給160,000円」で確認する必要があります。
実務上の注意点
- 最低賃金割れのリスク:固定残業代を導入していても、基本給部分が最低賃金を下回ると違法となります。
- 契約書・就業規則の明確化:固定残業代の時間数・金額を明示し、超過分は別途支払う旨を記載しておくことが必須です。
- 定期的なチェック:最低賃金は毎年改定されるため、見直しを怠ると知らないうちに違反になるケースがあります。
まとめ
固定残業代を超えた残業代は「時間外割増賃金」にあたり、最低賃金の算定基礎に含めることはできません。
最低賃金のチェックは、必ず「通常の労働時間に対する基本給部分」で行う必要があります。
企業としては、最低賃金改定のタイミングで「基本給部分がクリアしているか」を確認し、労務トラブルを未然に防ぐことが重要です。
👉 最低賃金チェックや固定残業代制度の見直しに不安がある方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
労務管理の観点からサポートいたします。