こんにちは、ひらおか社会保険労務士事務所です。
「従業員の能力不足を理由に人事評価や解雇を検討したいが、どのように証明すればよいのか?」
というご相談をよくいただきます。
能力不足を理由とする処遇(降格・契約更新拒否・解雇など)は、裁判でも慎重に判断されるため、客観的な裏付けが不可欠です。今回は、実務に役立つポイントを整理します。
能力不足を証明する方法
① 合理的な評価制度による証明
- 評価基準が明確に定められており、その基準に従って適正に評価を行っていることが必要です。
- たとえば「売上目標の達成率」「作業スピード」「顧客満足度」など、定量的・客観的な指標を用いることで、能力不足を裏付けやすくなります。
② 達成基準に基づく評価(制度がない場合)
- 評価制度が未整備でも、合理的な業務遂行基準があれば活用できます。
- 例:同職種の平均作業量に比べ極端に低い、業務の基本ルールを守れない など。
③ 業務上のミスやエピソードの記録化
- 評価制度や基準が曖昧な場合は、具体的な業務上のミスの記録が重要です。
- 口頭注意、指導記録、業務日報、顧客クレーム対応の記録などを積み重ねることで、能力不足を基礎づける証拠となります。
会社に求められる前提対応
能力不足の対応にあたっては、いきなり解雇することは認められにくい点に注意が必要です。
- 育成義務:OJTや研修など、能力向上のための機会を提供する
- 配置転換の検討:適性に合った部署・職務に異動させる努力を行う
- 改善の機会の付与:一定期間の目標設定や改善指導を経て、なお改善が見込めない場合に次の措置を検討
このような手順を踏むことで、会社の対応が「合理的」であることを示すことができます。
実務事例
事例:販売職Aさんのケース
小売業のAさんは、接客対応でミスが多く、売上成績も同僚に比べて著しく低い状況でした。
会社は次のような対応を実施しました。
- 半年間の販売スキル研修を実施
- 指導記録を残し、定期的な面談で改善計画を共有
- それでも改善が見られなかったため、バックオフィス業務への配置転換を提案
結果、Aさんは配置転換後に能力を発揮でき、解雇を回避。会社としてもトラブル防止につながりました。
まとめ
- 能力不足を証明するには、合理的な評価基準や具体的なミスの記録が必須。
- 会社には育成・改善の機会を与える義務があり、配置転換など解雇回避の努力も求められる。
- 記録とプロセスを整えておくことで、万が一紛争になった場合でも「会社の対応は合理的だった」と説明できます。
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