近年、多くの企業で導入されている「固定残業代制度」。
求人票などで「月給〇〇円(固定残業代30時間分を含む)」と記載されているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、実際の通知文を参考にしながら、固定残業代制度の仕組みと注意点をわかりやすく解説します。
固定残業代とは?
固定残業代とは、あらかじめ「残業代の一部を月給に組み込んで支給する制度」のことです。
例えば「基本給20万円+固定残業代5万円(30時間分)」と設定した場合、実際の残業時間が30時間未満であっても、毎月5万円を支給します。
一方で、残業時間が30時間を超えた場合には、超えた分の残業代を追加で支払う必要があります。
通知文のポイント
通知文には、以下の内容を明確に記載する必要があります。
- 固定残業代の金額
例:50,000円 - 設定時間数(目安となる残業時間)
例:30時間分
※「30時間を必ず働いてもらう」という意味ではありません。 - 算定方法
基礎時給 × 割増率(125%など) × 設定時間数 - 精算方法(実残業との比較)
- 実残業代が固定残業代より少ない → 固定残業代だけを支給
- 実残業代が固定残業代を超える → 差額を追加支給
事例で理解する固定残業代
事例1:実残業が少なかった場合
- 固定残業代:50,000円(30時間分)
- 実際の残業時間:10時間 → 実残業代は20,000円相当
➡ 固定残業代50,000円をそのまま支給(差額の返還は不要)
事例2:実残業が多かった場合
- 固定残業代:50,000円(30時間分)
- 実際の残業時間:40時間 → 実残業代は70,000円相当
➡ 固定残業代50,000円に加え、差額20,000円を追加で支給
企業と労働者双方の注意点
- 企業側の注意点
通知文や就業規則に「金額・時間数・精算方法」を明確に記載していないと、制度自体が無効と判断されるリスクがあります。 - 労働者側の注意点
「固定残業代に何時間分含まれているか」を必ず確認しましょう。実際に働いた残業時間と照らし合わせ、未払いがないかを把握することが大切です。
まとめ
固定残業代制度は、うまく運用すれば給与の安定性や処理の簡便さに役立ちます。
ただし、適切な通知・明確な精算ルールがなければトラブルにつながりやすい制度でもあります。
事業主の方は、通知文や規程を整備し、労働者の理解を得ながら運用することが重要です。
✅ 労務管理や就業規則の見直しでお困りの方は、ぜひご相談ください。