労務管理

職場におけるカスタマーハラスメントとは?定義と実務対応をわかりやすく解説【ひらおか社会保険労務士事務所】

カスタマーハラスメントとは?

職場におけるカスタマーハラスメントとは、顧客等の言動であって、労働者が従事する業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。

厚生労働省の指針では、次の3つの要素をすべて満たすものが、職場におけるカスタマーハラスメントとされています。

  1. 顧客等の言動であること
  2. 社会通念上許容される範囲を超えていること
  3. 労働者の就業環境が害されること

つまり、単なるクレームや正当な申入れがすべてカスタマーハラスメントになるわけではありません。

問題となるのは、要求の内容や言動の態様が行き過ぎており、従業員が安心して働けない状態になるケースです。

電話やSNSでの言動も対象になります

カスタマーハラスメントは、店舗や窓口などで対面して行われるものだけではありません。

電話、メール、SNS、口コミサイト、インターネット上の投稿などで行われるものも含まれます。

たとえば、

  • 長時間にわたる電話での強い叱責
  • SNSに悪評を書くと脅す行為
  • 従業員の氏名や写真をネットに投稿する行為
  • メールで執拗に謝罪や補償を求める行為

なども、状況によってはカスタマーハラスメントに該当する可能性があります。

「顧客等」には誰が含まれるのか?

ここでいう顧客等には、商品やサービスを利用するお客様だけでなく、事業に関係する幅広い相手が含まれます。

たとえば、

  • 商品やサービスを利用する顧客
  • 問い合わせをしてきた人
  • 取引先の担当者
  • 契約交渉の相手方
  • 施設利用者やその家族
  • 施設の近隣住民

などです。

医療機関や介護事業所であれば、患者本人だけでなく、ご家族からの過度な要求も対象になり得ます。

カスタマーハラスメントに該当し得る言動の例

厚生労働省の指針では、社会通念上許容される範囲を超える言動として、要求内容が不当なものや、手段・態様が相当でないものが挙げられています。

具体的には、次のようなケースです。

1. 理由のない要求

商品やサービスと関係のない要求をするケースです。

例:

  • 業務と関係のない個人的な対応を求める
  • 従業員のプライベートな情報を要求する
  • 契約内容と無関係な補償を求める

2. 過大な要求

契約やサービス内容を大きく超える要求です。

例:

  • 契約にない無料サービスを強く求める
  • 通常対応できない特別対応を当然のように求める
  • 不相当な値引きや返金を要求する

3. 暴言・脅迫・威圧的な言動

従業員の人格を否定したり、威圧したりする行為です。

例:

  • 「辞めさせろ」などと執拗に要求する
  • 大声で怒鳴る
  • 土下座を強要する
  • SNSに悪評を書くと脅す
  • 店舗や施設の物を壊すことをほのめかす

4. 継続的・執拗な言動

一度の苦情ではなく、何度も繰り返されるケースです。

例:

  • 毎日のように電話をかけてくる
  • 長時間拘束する
  • 同じ内容のメールを何度も送ってくる
  • 担当者を名指しして執拗に連絡する

実際に起こり得る事例

事例1:飲食店での長時間クレーム

飲食店で料理の提供が遅れたことをきっかけに、顧客が従業員に対して大声で叱責しました。

その後も何度も店舗に電話をかけ、「責任者を出せ」「SNSに書くぞ」と発言。

従業員は出勤することに強い不安を感じるようになりました。

このような場合、単なる苦情対応の範囲を超え、カスタマーハラスメントに該当する可能性があります。

事例2:介護事業所で家族から過度な要求を受けたケース

介護事業所で、利用者家族から「毎日特別に報告してほしい」「担当者を変えろ」「対応が悪いので謝罪文を出せ」と繰り返し求められました。

職員は通常業務に支障をきたし、精神的にも大きな負担を感じていました。

介護や医療の現場では、ご家族対応も重要ですが、社会通念上相当な範囲を超える要求には、組織として対応する必要があります。

事例3:SNSで従業員名を出して投稿されたケース

小売店での対応に不満を持った顧客が、従業員の名前を出してSNSに投稿しました。

投稿には「この店員は最低」など、人格を否定する表現が含まれていました。

インターネット上の投稿であっても、従業員の就業環境を害する場合は、カスタマーハラスメントとして対応を検討する必要があります。

経営者が押さえるべきポイント

カスタマーハラスメント対応で重要なのは、現場の従業員だけに対応を任せないことです。

経営者としては、次のような体制整備が求められます。

  • どのような言動がカスタマーハラスメントに当たるかを社内で共有する
  • 相談窓口を設置する
  • 対応記録を残す
  • 複数名で対応するルールを作る
  • 悪質な場合は対応を打ち切る基準を決める
  • 必要に応じて警察・弁護士・社労士等と連携する
  • 従業員を守る方針を明確にする

カスタマーハラスメントを放置すると、従業員のメンタル不調、離職、職場の士気低下につながるおそれがあります。

これは単なる接客トラブルではなく、会社の人材定着とリスク管理の問題です。

まとめ

職場におけるカスタマーハラスメントとは、顧客等の言動が社会通念上許容される範囲を超え、それによって労働者の就業環境が害されるものをいいます。

正当な苦情や申入れと、カスタマーハラスメントを区別することが大切です。

一方で、暴言、脅迫、過大な要求、SNSでの攻撃、長時間拘束などがある場合には、会社として従業員を守る対応が必要です。

従業員が安心して働ける職場をつくることは、会社の信頼と事業継続を守ることにもつながります。


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