労務管理

【実務解説】退職月が入社月と同じ場合の社会保険料はどうなる?──「同月得喪」のポイントをわかりやすく解説

ひらおか社会保険労務士事務所

従業員が「入社した月のうちに退職する」ケースは、決して珍しくありません。
しかし、このとき多くの企業で質問が増えるのが 社会保険料の取り扱い です。

本記事では、アップロード資料(「退職時の社会保険料についてのご案内」) をもとに、
“同月得喪(どうげつとくそう)”の場合の社会保険料の仕組み を、事例つきでわかりやすく解説します。

1. 「同月得喪」とは?

同じ月に資格を取得(入社)し、同じ月に資格を喪失(退職)すること をいいます。

  • 10月10日 入社
  • 10月25日 退職

→ この場合、資格取得日と喪失日が同月 なので「同月得喪」となります。


2. 同月得喪の場合の保険料の考え方

資料にもあるとおり、同月得喪のルールは非常にシンプルです。

📌 結論:1日でも資格取得すれば、その月の社会保険料は1か月分必要です。

日割り計算は行われません。

■ 対象となる保険料

  • 健康保険料(40~64歳は介護保険料含む)
  • 厚生年金保険料

従業員負担分については 最終給与から控除 するのが一般的です。

3. 【事例で理解】具体的なケース

◆ 事例①:10月に入社・10月に退職

  • 入社:10月10日
  • 退職:10月25日

10月分の保険料は丸1か月分必要

給与計算の際は、
健康保険・厚生年金の「10月分保険料」を最終給与から控除します。


◆ 事例②:最終給与が少なくて控除しきれない

退職者の最終勤務日が少なく、給与額が1万円だった場合、
保険料(例:月2万円)を控除できないことがあります。

→ この場合は、
不足分を本人から振込で徴収する必要あり(資料にも記載)

◆ 事例③:厚生年金保険料が“後日返金”になるケース

退職した月中に、

  • 国民年金に加入(第1号被保険者)
  • 他の会社で厚生年金に加入

という状況になると、
厚生年金保険料が二重加入扱いとなり、後日返金される可能性があります。

資料にもあるとおり、返金は日本年金機構から会社に入り、
会社から従業員へ返金する流れになります。

※健康保険料は還付の仕組みなし

4. 企業が押さえておくべき実務ポイント

✔(1)同月得喪は「1日加入でも1か月分」

再計算や日割り調整は不要。

✔(2)厚生年金だけ“還付の可能性あり”

退職後の国民年金/新会社加入の有無を確認しておくとスムーズ。

✔(3)最終給与が足りない場合の対応を事前に説明

後日の振込対応が必要になるため、
退職者に事前案内を行うとトラブル防止になります。

✔(4)会社の説明資料を整えておく

アップロード資料のような案内文を用意しておくと、
退職時の問い合わせ対応が格段に楽になります。

5. まとめ

「入社した月に退職すると、社会保険料はどうなるのか?」
という質問は、現場でも多いテーマです。

ポイントはただ1つ:

同じ月に取得・喪失があれば、その月は1か月分の保険料が必要

厚生年金は後日還付の可能性があるため、
企業としては適切に説明し、退職者とのトラブルを防ぐことが大切です。


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