退職後の健康保険証を使って受診してしまうケースがあります
従業員が退職した後、うっかり以前の健康保険証や資格情報を使って病院を受診してしまうことがあります。
この場合、本来は退職後に加入していた国民健康保険などで受診すべきところ、協会けんぽの資格を使って医療機関を受診したことになります。
その結果、協会けんぽが負担した医療費について、後日「返納してください」と通知が届くことがあります。
返納金清算に係る同意書とは?
「協会けんぽ資格喪失後受診に伴う返納金清算に係る同意書(兼委任状)」とは、資格喪失後に協会けんぽの資格を使って受診した場合に、保険者間調整を利用するための書類です。
この書類を提出することで、受診時に加入していた国民健康保険などに対する療養費の申請を、協会けんぽが代理で行い、受領した療養費を返納金に充当して精算する流れになります。
どのような場合に使う書類か?
たとえば、次のようなケースです。
- 従業員が退職後に協会けんぽの資格を使って受診した
- 扶養家族が資格喪失後に以前の健康保険で受診した
- 本来は国民健康保険で受診すべきだった
- 協会けんぽから医療費返納の案内が届いた
- 返納金と国民健康保険の療養費を相殺・清算したい
つまり、本人が一度全額を立て替えて、後から国民健康保険へ請求する負担を軽減するための仕組みです。
記入時のポイント
記入例では、主に次の項目を記載することになります。
1. 協会けんぽ加入時の支部名
協会けんぽに加入していたときの支部名を記載します。
例:東京支部、大阪支部など
記入例でも「協会けんぽ加入時の支部名を記載してください」と案内されています。
2. 被保険者の氏名・住所・電話番号
退職した本人の氏名、住所、電話番号を記載します。
会社ではなく、被保険者本人の情報を記入する点に注意が必要です。
3. 療養を受けた方の氏名
実際に病院を受診した方の氏名を記入します。
ただし、受診した方が被保険者本人の場合は、この欄の記入は不要です。
4. 被保険者との続柄
受診した方が家族の場合は、配偶者、子、父母などの続柄を記載します。
5. 受診時に加入していた国民健康保険の情報
受診時に加入していた国民健康保険について、次の情報を記載します。
- 保険者名称
- 保険者番号
- 記号
- 番号
資格情報のお知らせ等を確認しながら記入します。記号がない場合は空欄でよいとされています。
実務上の注意点
1. 受診された方ごとに1枚作成する
記入例では、「お一人につき一枚ずつ、受診された方全員分を作成してください」とされています。
家族も含めて複数名が受診している場合は、それぞれ作成が必要です。
2. 退職後の保険証使用を防ぐ仕組みが重要
会社としては、退職時に健康保険証や資格確認書の返却を確実に案内することが大切です。
特に退職者には、
「退職日の翌日以降は、会社の健康保険は使用できません」
と明確に伝えておく必要があります。
3. 扶養家族にも注意が必要
本人だけでなく、扶養家族が資格喪失後に受診してしまうケースもあります。
退職時には、本人だけでなく家族分の保険証・資格確認書も使用できなくなることを説明しておきましょう。
実際に起こり得る事例
事例1:退職後に本人が病院を受診したケース
従業員Aさんは、3月31日付で退職しました。
しかし、4月上旬に体調を崩し、手元に残っていた会社の健康保険証を使って病院を受診してしまいました。
後日、協会けんぽから医療費の返納通知が届きました。
このような場合、受診時に国民健康保険へ加入していれば、保険者間調整を利用して返納金の清算を行うことが考えられます。
事例2:扶養家族が誤って受診したケース
退職した従業員Bさんの配偶者が、資格喪失後に以前の健康保険の資格で受診してしまいました。
本人は退職後の手続きが必要なことを理解していましたが、家族には伝わっていませんでした。
この場合も、実際に受診した方ごとに同意書を作成する必要があります。
退職時には、家族分も含めて健康保険が使えなくなることを説明しておくことが重要です。
経営者・人事担当者が押さえるべきポイント
この手続きは、退職者本人の問題と思われがちです。
しかし、会社側の退職時説明が不十分だと、退職者とのトラブルや問い合わせ対応の負担につながることがあります。
会社としては、
- 退職日の翌日から健康保険は使用できないことを説明する
- 保険証・資格確認書の返却を確認する
- 扶養家族分も忘れずに回収する
- 退職後の国民健康保険・任意継続の案内を行う
- 誤って受診した場合の対応方法を案内できるようにしておく
といった対応が大切です。
まとめ
協会けんぽ資格喪失後に受診してしまった場合、協会けんぽから医療費の返納を求められることがあります。
その際、保険者間調整を利用する場合に提出するのが、
「協会けんぽ資格喪失後受診に伴う返納金清算に係る同意書(兼委任状)」
です。
退職後の健康保険に関するトラブルは、退職時の説明不足から発生することも少なくありません。
企業としては、退職時の案内を整備し、従業員や家族が誤って保険を使用しないよう、事前に分かりやすく説明しておくことが重要です。
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