|ひらおか社会保険労務士事務所
職場でのセクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)は、企業にとって重大なリスクです。
被害者の心身への影響はもちろん、会社への信頼低下、離職、訴訟リスク、行政指導など、経営にも大きなダメージを与えます。
厚生労働省リーフレット(職場におけるセクシュアルハラスメント対策)でも示されているとおり、セクハラ防止措置は事業主の義務です。
本記事では、実務ですぐに活用できる形で、
- セクハラの定義
- 事業主が講じるべき防止措置
- 実際に起こりがちな事例
- 就業規則や社内周知のポイント
をわかりやすく解説します。
1. セクシュアルハラスメントとは?(定義と種類)
厚労省リーフレット(1ページ目)では、次の2つに分類されています。
(1)対価型セクシュアルハラスメント
性的言動に対する反応によって、労働者が不利益を受けるもの。
例
- 上司が「食事に行けば評価を上げてあげる」と発言
- 拒否したことで配置転換・昇進見送りなどの不利益を受けた
(2)環境型セクシュアルハラスメント
性的言動によって職場環境が害され、就業するうえで看過できない状態となるもの。
例
- 同僚が性的な冗談・からかいを繰り返し、職場に居づらい
- 体や服装についてのコメントを日常的に受ける
- 職場で性的な画像を閲覧する行為が常態化
2. 事業主に義務付けられる「セクハラ防止措置」
男女雇用機会均等法に基づき、事業主は次の防止措置を講じる義務があります
(厚労省リーフレット 1ページ下段「事業主が講ずべき防止措置」参照)。
【義務①】方針の明確化(就業規則・社内での宣言)
- セクハラは許さない旨を明文化
- 具体的な禁止行為を例示
- 相談窓口の設置・対応方針を明記
★ポイント
「何がセクハラに当たるのか」具体例を示すことが重要。
従業員が「知らなかった」と言い訳できない状態を作る。
【義務②】相談窓口の設置と対応体制の整備
- 男女どちらでも相談しやすい窓口担当者の配置
- 電話・メール・対面など複数ルート
- 苦情申出への迅速かつ適切な対応
【義務③】被害者への不利益取扱いの禁止
相談したことによる降格・配置転換・解雇などの不利益は違法です。
【義務④】再発防止措置
- 事実確認
- 行為者への指導・懲戒
- 職場環境の改善
- 教育研修の実施
3. 【実務に使える】具体的な事例と対応ポイント
◆事例①:女性従業員が「胸元の開いた服を着ているね」と上司に言われた
(環境型セクハラ)
▶ 問題点
身体に関するコメントは、本人が不快に感じればセクハラ。
位置関係により「拒否しづらい」という職場特性も評価されます。
▶ 会社の対応
- 相談窓口で事実確認
- 上司への注意指導
- 状況に応じて配置変更
- チーム全体への研修
◆事例②:飲み会で「2人で抜けようよ」と上司が部下に誘い続けた
(対価型+環境型セクハラの可能性)
▶ 問題点
執拗な誘いは「性的な関係の要求」と評価される可能性が高い。
▶ 対応
- 上司への厳重注意/懲戒検討
- 被害者が安心して働けるようにフォロー
- 飲み会等のハラスメント防止ガイドライン策定
◆事例③:男性従業員が同性の同僚から性的な冗談を繰り返し受けている
(環境型セクハラ/同性間も対象)
▶ ポイント
同性間でもセクハラは成立。
「本人が嫌がっているか」の主観が重要です。
4. 【そのまま使える】社内周知文書(例)
厚労省リーフレット2ページには、実際に使える周知文書の例が掲載されています。
内容は以下のような構成です。
🔹 周知文書に記載すべき内容
- セクハラを許さない会社方針
- 禁止行為の具体例
- 行為者に対する懲戒の可能性
- 被害者の不利益取扱い禁止
- 相談窓口の設置(担当者名・連絡先)
- 相談者のプライバシー保護
- 再発防止の取組
5. セクハラ防止のために事業主が今日からできること
✔ 就業規則の見直し
禁止行為を具体的に記載し、懲戒との関係を明確にする。
✔ 従業員教育の実施
特に管理職に対しては「指導とハラスメントの違い」を徹底。
✔ 相談窓口の強化
男女1名ずつの担当者配置が望ましい。
メール・電話など複数ルートを用意。
✔ 実例を用いた研修の実施
「具体的にどんな行為がNGか」が理解されやすくなる。
✔ 外部専門家(社労士・弁護士)によるチェック
第三者による制度整備・研修・調査対応は有効。
6. まとめ:セクハラ対策は“企業を守るための投資”
セクシュアルハラスメントは、
- 生産性低下
- 退職・採用難
- 行政指導
- 損害賠償
など企業リスクが非常に大きい問題です。
一方で、適切な対策をすれば、
働きやすい職場づくり → 離職防止 → エンゲージメント向上
と大きなメリットをもたらします。
ひらおか社会保険労務士事務所では、
- 就業規則の整備
- セクハラ相談窓口体制づくり
- 研修(管理職向け・従業員向け)
- 事実調査の支援
など、事業主さまの実務を伴走サポートしています。