労務管理

【実務解説】労働保険料の計算で迷わない/ひらおか社会保険労務士事務所

賃金総額に「算入するもの・しないもの」早見表

労働保険料(労災保険料・雇用保険料)の計算で、
毎年のように悩まされるのが「賃金総額に含めるかどうか」 です。

  • この手当は入れる?
  • これは実費だから除外?
  • 後から修正になるとどうなる?

判断を誤ると、
追徴金・延滞金・是正指導 といったリスクにつながります。

本記事では、
経営者が押さえておくべき実務ポイントを、
「労働保険料等の算定基礎となる賃金早見表」をもとに、
分かりやすく解説します。

1.労働保険料の「賃金総額」とは?

労働保険料は、
1年間に支払った「賃金総額」 をもとに計算します。

ここでいう「賃金」は、
労働の対償として支払われる ほぼすべてのもの が原則対象です。

👉 ただし、
すべてが無条件で含まれるわけではない
という点が実務上の落とし穴です。


2.賃金総額に「算入するもの」(代表例)

次のようなものは、原則として算入対象 となります

  • 基本給・固定給
  • 残業手当・深夜手当・休日手当
  • 各種手当
     (役職手当、家族手当、住宅手当、技能手当 等)
  • 通勤手当(定期券・回数券含む)
  • 賞与
  • 休業手当(労基法26条)
  • 社会保険適用促進手当
  • 前払い退職金
  • 社宅等の住居の利益(一定条件あり)

👉 「毎月払っている」「労働の対価」
この2点が判断の軸になります。


3.賃金総額に「算入しないもの」(代表例)

一方、次のようなものは 算入しません

  • 出張旅費・宿泊費など(実費弁償)
  • 災害見舞金・結婚祝金・弔慰金
  • 制服
  • 私傷病見舞金
  • チップ(一定の場合を除く)
  • 退職金(退職時に支払われるもの)
  • 解雇予告手当(労基法20条)

👉 「労働の対償ではない」「恩恵的・実費補填」
これが除外判断のポイントです。


4.判断に迷いやすい手当(要注意)

① 住居の利益(社宅など)

  • 社宅を貸与している一部社員のみ対象
  • 他の社員に均衡給与がない場合

👉 算入対象になるケースあり


② 社会保険適用促進手当

  • 短時間労働者の社会保険加入を促す目的
  • 事業主が保険料負担軽減のために支給

👉 算入対象(要注意)


5.【実務事例】よくあるミス

事例:年度更新後に追徴を受けたケース

  • 通勤手当・住宅手当を「除外」と誤認
  • 労働保険の年度更新で賃金総額を過少申告
  • 後日、労基署から指摘 → 追徴+延滞金

👉 手当の判断ミスが原因


6.経営者が押さえるべき実務ポイント

  • 「名称」ではなく 支給実態 で判断する
  • 毎年同じ処理でも、制度変更で扱いが変わることがある
  • 年度更新前に 賃金の洗い出し を行う
  • 判断に迷う場合は、早めに専門家へ確認

まとめ|賃金判断は「毎年の確認」が必須

労働保険料の賃金判断は、
一度決めたら終わりではありません。

  • 手当の新設
  • 働き方の変更
  • 法令・通達の見直し

これらにより、
昨年はOKでも今年はNG というケースもあります。


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賃金総額の判断や、
労働保険の年度更新に不安がある場合は、
早めの確認が一番のリスク対策です。

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