1.はじめに
職場内や取引先関係者との不倫は、原則として私生活上の問題にとどまります。
しかし、就業環境を著しく悪化させる場合や、風紀や秩序を乱す場合には、企業として何らかの人事措置(懲戒処分や異動など)が求められることがあります。
その際、感情論ではなく、客観的な証拠と適切な手続きを踏まえた対応が重要です。
本記事では、実務で活用できる代表的な2つの書式をご紹介します。
2.交友関係に関するヒアリングシート(調査段階)
目的
不倫関係の疑いがある場合に、聴取内容を記録するための書式です。
証拠収集を適切に行い、後日のトラブルや裁判に備えることを目的とします。
記載内容
- 面談日時・場所
- 聴取者、対象者、聴取方法(対面・オンラインなど)
- 不倫関係と判断した具体的事実(日時・場所・当事者・内容)
- 備考
具体的な「記載例」としては、
- 本社給湯室での親密な会話
- ホテルに出入りする様子の目撃
- 私的なチャット内容の確認
などが挙げられています。
このように、客観的事実を淡々と残すことがポイントです。
3.意思確認書(異動に関する同意の有無兼異動先希望)(対応段階)
目的
不倫に関わった従業員を異動させる場合に、異動の同意有無や希望を確認するための書式です。
記載内容
- 異動に「同意する」または「同意しない」の選択
- 希望する異動先の記入欄
- 本人署名・日付
異動は会社の人事権の範囲内で実施可能ですが、本人の意向を確認しておくことで「一方的に処分された」との不満を和らげ、後日の紛争を防ぐ効果があります。
4.実務での活用事例
事例:不倫トラブルから異動対応へ
ある企業で、同一部署の従業員Aと従業員Bが不倫関係にあることが発覚しました。
周囲から「仕事に集中できない」「評価が不公平になるのでは」といった声が上がり、職場の雰囲気が悪化しました。
調査段階
人事部はまず「交友関係に関するヒアリングシート」を用い、
- 目撃日時
- 発言内容
- チャットのやりとり
などを第三者から聴取・記録しました。
対応段階
次に、当事者である従業員に「意思確認書」を提示し、異動の同意有無と希望部署を確認しました。
その結果、異動に合意が得られ、従業員を別部署へ配置転換。
結果として、職場秩序が早期に回復しました。
5.まとめ
- 不倫は私生活上の行為だが、職場秩序を乱す場合は企業が対応可能。
- 調査段階では「ヒアリングシート」で証拠を客観的に記録。
- 対応段階では「意思確認書」で異動の同意・希望を確認。
- 書式を適切に活用することで、感情論ではなく法的に整理された対応が可能となる。