「残業代の計算は給与ソフトに任せているから大丈夫」
「従業員から何も言われていないので問題ない」
「固定残業代を払っているから、追加の残業代は発生しない」
このように考えていませんか?
2026年8月21日、厚生労働省から「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」が公表されました。
全国の労働基準監督署が令和7年に取り扱った賃金不払事案は、22,605件。
決して一部の会社だけの問題ではありません。
特に注意したいのが、会社側に「賃金を払わない」という意図がなくても、労働時間の把握方法や残業代の計算方法に誤りがあれば、結果として賃金不払いが発生してしまうことです。
今回は、厚生労働省が公表した最新データをもとに、中小企業が確認しておきたいポイントを社会保険労務士が解説します。
令和7年の賃金不払事案は22,605件
厚生労働省によると、令和7年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案は、次のとおりです。
| 項目 | 令和7年 |
|---|---|
| 賃金不払事案 | 22,605件 |
| 対象労働者数 | 173,016人 |
| 賃金不払の金額 | 128億5,782万円 |
件数は前年より251件増加しています。
さらに、労働基準監督署の指導によって令和7年中に使用者が賃金を支払い、解決したものは、
- 21,731件(96.1%)
- 167,828人(97.0%)
- 109億9,703万円(85.5%)
となっています。
つまり、労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案の多くで、実際に会社による支払いにつながっていることが分かります。
「給与は毎月払っているから大丈夫」ではありません
「賃金不払い」と聞くと、
会社が給料そのものを払っていないケース
をイメージするかもしれません。
しかし、企業が注意しなければならないのは、それだけではありません。
例えば、
- 残業時間を正しく集計できていない
- 始業前・終業後の作業時間を労働時間に含めていない
- 固定残業代を払っているものの、超過分を支払っていない
- 残業代の計算基礎となる賃金を間違えている
- 休憩として処理している時間に実際には仕事をしている
- 管理職だからという理由だけで残業代を支給していない
- 研修・朝礼・着替えなどの時間を一律に労働時間から除外している
といったケースでも、未払い賃金・未払い残業代が発生する可能性があります。
会社としては正しく給与計算をしているつもりでも、労働時間の管理方法そのものに問題があれば、後から未払いが判明することがあります。
特に注意したい「固定残業代」
中小企業からご相談を受ける中でも、特に確認していただきたいのが固定残業代(みなし残業代)です。
例えば、
「基本給30万円(固定残業代を含む)」
とだけ雇用契約書に記載していないでしょうか。
固定残業代制度を導入しているからといって、何時間働いても追加の残業代が不要になるわけではありません。
固定残業代として想定している時間を超えて時間外労働等を行い、法定の割増賃金額が固定残業代を上回る場合には、原則として差額の支払いが必要になります。
また、制度の設計や雇用契約書・就業規則の記載方法についても確認が必要です。
「昔からこの方法で給与を払っている」
という会社ほど、一度チェックしておくことをおすすめします。
タイムカードと給与計算、本当に一致していますか?
未払い残業を防ぐために非常に重要なのが、
「実際の労働時間」と「給与計算に使用している労働時間」が一致しているか
という点です。
例えば、
タイムカードでは19時15分まで勤務
↓
給与計算では19時までとして計算
という処理が毎日続いていた場合、1日では小さな差でも、数か月・数年積み重なると大きな金額になります。
また、
「残業は事前申請制だから、申請されていない残業は支払っていない」
という運用にも注意が必要です。
残業申請の有無だけではなく、会社が実際の労働時間をどのように把握していたのかが重要になります。
「管理職だから残業代なし」も要注意
もう一つ、中小企業でよくあるのが、
「課長だから残業代は支払っていません」
というケースです。
会社で「課長」「店長」「マネージャー」などの役職を付けていることと、労働基準法上の「管理監督者」に該当することは別問題です。
役職名だけで判断することはできません。
権限や責任、勤務態様、待遇などを踏まえて判断する必要があります。
そのため、
「役職者には残業代を支払わない」
という運用をしている会社は、一度確認しておいた方が安心です。
労基署から連絡が来てから確認するのでは遅い
労働基準監督署から連絡や調査が入ってから、
「就業規則を確認します」
「雇用契約書を探します」
「過去のタイムカードを確認します」
「残業代の計算方法を調べます」
となると、会社側の負担はかなり大きくなります。
大切なのは、問題が起きてから対応することではなく、何も起きていない段階で労務管理を確認しておくことです。
特に、
勤怠管理 → 残業時間の集計 → 給与計算 → 就業規則・雇用契約書
がきちんとつながっているかを確認することが重要です。
まずはこの7項目をチェックしてください
次の項目に1つでも不安があれば、一度確認することをおすすめします。
- タイムカード・勤怠システムで実際の始業・終業時刻を把握している
- 始業前・終業後の作業時間を適切に処理している
- 固定残業代の時間数・金額が明確になっている
- 固定残業時間を超えた場合の差額を支払っている
- 残業代の計算基礎に含める手当を確認している
- 「管理職だから」という理由だけで残業代を除外していない
- 就業規則・雇用契約書・給与計算の内容が一致している
1つでも「よく分からない」があれば、今が見直しのタイミングです。
「未払い残業があるか分からない」というご相談でも大丈夫です
シェアマインド社労士事務所では、中小企業の経営者・人事担当者様から、
「今の残業代の計算方法で合っていますか?」
「固定残業代の設定を確認してほしい」
「タイムカードと給与計算の処理が合っているか不安です」
「労働基準監督署から連絡がありました」
「就業規則と実際の運用が合っていません」
といったご相談に対応しています。
問題が起きてからではなく、問題が起きる前に確認することが一番の労務トラブル対策です。
「相談するほどのことか分からない」という段階でも構いません。
現在の勤怠管理・給与計算・雇用契約書・就業規則を確認し、会社の運用に問題がないか一緒に整理いたします。
未払い残業や賃金計算について少しでも気になることがございましたら、お気軽にシェアマインド社労士事務所までご相談ください。
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参考|厚生労働省
2026年8月21日、厚生労働省は「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」を公表しています。
令和7年の賃金不払事案は22,605件、対象労働者は173,016人、金額は128億5,782万円でした。
詳細については、厚生労働省の公表資料をご確認ください。
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和7年)」