判例

就業規則に書いていても無効? ひらおか社会保険労務士事務所

変形労働時間制が認められなかった裁判例を解説

(東京地裁令和7年7月3日判決)

企業では、業務の繁閑に合わせて労働時間を調整するために
「変形労働時間制」を導入している会社も多いと思います。

しかし実は、

就業規則に書いているだけでは、制度が認められない場合があります。

今回は、
就業規則の周知が不十分だったために変形労働時間制が否定された裁判例を、
経営者の方向けにわかりやすく解説します。

事件の概要(東京地裁令和7年7月3日判決)

この裁判は、派遣会社で働く労働者が、

「休憩時間中でも出動する可能性があるので、
休憩時間も労働時間ではないか」

として賃金を請求した事案です。

業務内容

・高速道路の緊急点検業務
・事故などが発生した場合は緊急出動
・休憩時間中でも出動する可能性あり

会社側は

「変形労働時間制を採用している」

と主張しました。

しかし裁判所は
変形労働時間制の適用を認めませんでした。

裁判所の判断ポイント

裁判所は次のように判断しました。

①変形労働時間制は例外制度

労働基準法では

通常
1日8時間・週40時間

を超えて働かせることはできません。

変形労働時間制は

この原則の例外制度

です。

そのため

法律の要件を満たさない場合は無効になります。


②就業規則の「周知」が必要

変形労働時間制を導入するには

・就業規則
・労使協定

などで定める必要があります。

さらに重要なのが

従業員への周知です。

労働基準法106条では

企業には
就業規則を労働者に周知する義務があります。

今回の問題点

この会社では

就業規則が

事務所担当者のロッカーに保管

されていました。

しかし

・自由に閲覧できない
・従業員に場所の案内もない

状態でした。

そのため裁判所は

「周知されていない」

と判断しました。

結果として

変形労働時間制は無効

となりました。

裁判のポイント(経営者が注意すべき点)

この裁判から分かる重要なポイントは次の3つです。

①就業規則に書いているだけでは足りない

企業側は

「就業規則に書いている」

と考えていても

従業員が見られない状態では無効

になる可能性があります。


②周知義務は企業側の責任

裁判では

企業側に立証責任があります。

つまり

会社が

「周知していた」

と証明できなければなりません。


③労働時間制度は厳しく判断される

裁判所は

基本的に

労働者保護の観点で判断します。

そのため

会社に不利な判断が出るケースも多くあります。


【実務】就業規則の周知方法(おすすめ)

企業では次のような方法が安全です。

✔ 社内共有フォルダ

社員がいつでも閲覧可能

✔ 社内掲示

休憩室などに設置

✔ 冊子を設置

共有ロッカー
本棚
総務窓口

✔ 入社時説明

就業規則の場所を説明


【事例】よくあるトラブル

事例①

運送会社

・1年単位変形労働時間制
・就業規則は社長の机の中

結果

制度が無効と判断され残業代請求


事例②

飲食店

・1か月変形労働時間制
・アルバイトが就業規則を見たことがない

結果

残業代トラブルに発展


社労士としてのアドバイス

経営者の中には

「就業規則はあまり見せたくない」

という方もいらっしゃいます。

しかし

見せないことが会社のリスクになります。

今回の裁判でも

・制度の内容
・業務の性質

よりも

周知の有無

が決定的でした。


まとめ

今回の裁判のポイントは次のとおりです。

・変形労働時間制は例外制度
・就業規則の周知が必要
・閲覧できない状態では無効になる
・企業は周知の証明が必要

労働時間制度は
会社のリスクに直結する重要な分野です。

一度、自社の制度を確認してみることをおすすめします。


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