日本では毎年のように地震・台風・豪雨などの自然災害が発生しています。
近年では南海トラフ地震や首都直下地震への備えも話題となり、「会社として何を準備しておくべきか」と不安を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際に災害が発生すると、
- 「従業員を休ませるべき?」
- 「休業手当は支払わないといけない?」
- 「出勤できなかった社員の給与は?」
- 「災害でケガをしたら労災になる?」
など、多くの労務問題が一気に発生します。
実は、これらは事前にルールを決めておくことで会社を守ることができます。
「その場の判断」が会社を危険にする
災害時に最も危険なのは、
「社長のその場の判断」だけで対応してしまうことです。
例えば、
- 社員Aには給与を支払った
- 社員Bには支払わなかった
- 店舗ごとに対応が違った
このような状況になると、
「不公平だ」
「説明を受けていない」
と従業員とのトラブルにつながる可能性があります。
だからこそ、
災害が起きる前に会社のルールを決めておくこと
が重要なのです。
事例① 台風接近で営業を休止した飲食店
大阪市内で飲食店を経営するA社。
大型台風の接近により、社長は前日に営業中止を決定しました。
翌日、
「今日は休業だから給与は支払わない」
と従業員へ伝えたところ、
「会社都合では?」
「休業手当は出ないのですか?」
との問い合わせが相次ぎました。
結局、就業規則にも災害時の取扱いが定められておらず、労務トラブルへ発展しました。
もし事前に
- 災害時の出勤判断
- 休業時の取扱い
- 緊急連絡方法
を定めていれば、防げたケースでした。
休業手当は必ず支払う必要がある?
ここは経営者から最も多い質問です。
答えは
「ケースによって異なります。」
例えば、
地震や台風によって事業所そのものが被災し、操業ができない場合など、一定の条件を満たす「不可抗力」による休業では、休業手当の支払義務が生じない可能性があります。
一方で、
「安全のため今日は営業を休みにしよう」
という会社判断のみで休業した場合には、休業手当の支払いが必要になるケースがあります。
つまり、
“災害だから払わなくてもいい”
というわけではありません。
給与日前でも給与を支払わなければならないことも
意外と知られていませんが、
労働基準法第25条には
「非常時払い」
という制度があります。
災害で被災した従業員から請求があった場合には、
すでに働いた分の給与については、
給与日を待たずに支払う義務があります。
経営者としては知っておきたい制度です。
BCP(事業継続計画)が会社を守る
災害対策というと、
非常食やヘルメットを準備するだけと思われがちです。
しかし本当に重要なのは
BCP(事業継続計画)
です。
BCPとは、
災害が発生しても、
できるだけ早く事業を復旧させるための計画です。
例えば、
- 誰が指揮を執るか
- 従業員の安否確認方法
- 重要データのバックアップ
- 取引先との連絡方法
- 優先的に再開する業務
などを事前に決めておきます。
事例② 建設会社がBCPを作成していた結果…
従業員20名の建設会社B社。
以前からBCPを作成し、
- 緊急連絡網
- クラウドでのデータ保存
- 安否確認アプリ
- 緊急時マニュアル
を整備していました。
豪雨災害が発生した際も、
全社員の安否を30分以内に確認。
翌日には優先現場を決定し、取引先へ迅速に連絡できたことで、大きな信用を失わずに済みました。
一方、近隣企業では連絡体制が整っておらず、営業再開まで1週間以上を要しました。
「備えていた会社」と「備えていなかった会社」の差が、そのまま事業継続力の差となった事例です。
今すぐ確認したい5つのチェックポイント
災害が起きる前に、次の項目を確認しましょう。
✅ 就業規則に災害時の対応が定められている
✅ 緊急連絡網・安否確認方法がある
✅ 非常用品・備蓄品を準備している
✅ BCP(事業継続計画)を策定している
✅ 災害時の休業・給与ルールを決めている
1つでも不安があれば、早めに見直すことをおすすめします。
社会保険労務士の視点
自然災害は、
**「いつか来るもの」ではなく、「いつ来てもおかしくないもの」**です。
実際に災害が起きてから就業規則を見直したり、BCPを作成したりすることはできません。
だからこそ、
平時から
- 就業規則
- 災害時対応マニュアル
- BCP
- 労務管理体制
を整備しておくことが、従業員の命と会社の未来を守ることにつながります。
「何から始めればいいかわからない」という企業ほど、専門家へ相談するメリットは大きいでしょう。
まとめ
自然災害への備えは、防災用品を揃えるだけでは十分ではありません。
経営者が備えるべきなのは、
- 災害時の労務管理
- 休業手当の考え方
- 非常時払いへの対応
- BCP(事業継続計画)
- 就業規則の整備
です。
万が一のときでも社員を守り、会社を止めないために、今から準備を始めましょう。
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