「パートだから社会保険には入れなくていい」
「週30時間未満だから社会保険の対象外」
「従業員50人くらいだから、うちには関係ない」
そう思っていませんか?
その判断、現在の社会保険のルールでは間違っている可能性があります。
2024年10月1日から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用範囲が拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上となる企業等で働く一定のパート・アルバイトについて、社会保険への加入が必要となっています。
しかも、社会保険の適用範囲は今後さらに拡大します。
「うちは大丈夫」と思い込まず、一度、自社のパート・アルバイトの働き方を確認してみましょう。
そもそも何が変わった?「100人超」から「50人超」へ
厚生労働省は2024年8月21日、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用拡大に伴い、事務取扱いに関する通達を改正しました。
従来の企業規模要件について、2024年10月1日以降は「100人」を「50人」と読み替えることとされています。
つまり、分かりやすくいうと、
厚生年金保険の被保険者数が51人以上となる企業等まで対象が広がった
ということです。
この改正自体は2024年10月からすでに施行されています。
2026年現在、「これから対応する制度」ではありません。
すでに対応できていなければ、加入漏れが生じている可能性がある制度です。
パート・アルバイトが社会保険に加入する「4つの条件」
では、どのようなパート・アルバイトが対象になるのでしょうか。
通常の労働者の4分の3以上働いていない短時間労働者であっても、特定適用事業所等で勤務し、次の条件を満たす場合には、健康保険・厚生年金保険への加入対象となります。
① 週の所定労働時間が20時間以上
まず確認するのが、雇用契約上の週の所定労働時間です。
例えば、
1日5時間 × 週4日=週20時間
であれば、この要件に該当します。
「正社員より勤務時間が短いから社会保険には入らない」とは限りません。
② 所定内賃金が月額8.8万円以上
次に確認するのが賃金です。
目安となるのは、
月額8万8,000円以上
です。
ただし、この8万8,000円を判断するときには、すべての給与を単純に合計するわけではありません。
例えば、通勤手当、家族手当、賞与、時間外労働に対する割増賃金などは、この要件を判定する際の賃金には含まれません。添付された通達でも、この取扱いが具体的に示されています。
「給与明細の総支給額が8万8,000円を超えたから加入」
という単純な判定ではないため注意しましょう。
③ 2か月を超える雇用の見込みがある
短時間労働者についても、雇用期間の確認が必要です。
現在は「1年以上働く見込み」という従来の要件は撤廃されています。
雇用契約の期間が2か月以内であっても、契約更新などによって2か月を超えて使用されることが見込まれる場合には、当初から社会保険の適用対象となる可能性があります。
短期契約を更新しているパート・アルバイトがいる会社は特に注意してください。
④ 学生ではない
原則として学生は対象外です。
ただし、
- 休学中
- 定時制課程等
- 卒業後も同じ会社で働く予定の卒業予定者
など、学生であっても「学生ではないもの」として取り扱われるケースがあります。
「学生アルバイトだから全員対象外」と一律に判断しないことが大切です。
「51人」の数え方を間違えていませんか?
ここは、企業からご相談を受ける際にも注意したいポイントです。
「従業員が51人いるかどうか」ではありません。
特定適用事業所は、原則として、1年のうち6か月間以上、厚生年金保険の被保険者数が51人以上となることが見込まれる企業等です。
さらに法人の場合は、
店舗ごと・営業所ごとではなく、同一法人格に属するすべての適用事業所を合算
して判断します。
例えば、
大阪本社 30人
東京支店 15人
名古屋営業所 10人
という同一法人であれば、
30人+15人+10人=55人
として確認することになります。
「うちの店舗には20人しかいないから対象外」という判断は危険です。
添付された通達でも、法人の場合は同一法人格に属するすべての適用事業所を「事業主が同一である適用事業所」として取り扱うことが示されています。
契約上は週20時間未満。でも実際は毎週20時間以上働いている場合は?
ここも見落としやすいところです。
例えば、
雇用契約書:週18時間
となっているものの、人手不足などによって、
実際には毎週22~25時間程度働いている
というケースです。
「契約書に18時間と書いてあるから対象外」とは限りません。
通達では、所定労働時間が週20時間未満でも、実際の労働時間が直近2か月で週20時間以上となっており、今後も同様の状態が続くことが見込まれる場合には、週20時間以上として取り扱うこととされています。
つまり、
雇用契約書だけではなく、実際の勤務実態まで確認する必要があります。
これはかなり重要です。
社会保険の加入漏れを放置するとどうなる?
社会保険への加入が必要だった従業員について加入手続きをしていなかった場合、後から資格取得時期を遡って手続きすることになる可能性があります。
そうなると会社としては、
「過去分の社会保険料をどうするか」
という問題が発生します。
従業員本人にも社会保険料の負担が生じるため、
「今まで引かれていなかったのに、急に過去分まで払うんですか?」
という話になり、労使トラブルにつながることも考えられます。
だからこそ、加入漏れは発覚してから対応するより、事前に対象者を正しく判定することが重要です。
2027年10月からは「36人以上」へ。50人以下の会社も要注意
そして、ここからが2026年現在の重要ポイントです。
日本年金機構は、短時間労働者への社会保険適用について、今後さらに企業規模要件を段階的に縮小すると案内しています。
2027年9月まで:51人以上
2027年10月~:36人以上
2029年10月~:21人以上
2032年10月~:11人以上
と対象企業が拡大していく予定です。
つまり、
現在、厚生年金保険の被保険者が36~50人程度の会社は、次の適用拡大が目前です。
「まだ対象ではないから何もしなくていい」ではなく、今のうちから、
対象となるパート・アルバイトは何人いるのか、会社負担の社会保険料はいくら増えるのか、労働時間や雇用契約をどうするのか――。
こうした点を整理しておくことをおすすめします。
【企業向け】社会保険加入漏れチェックリスト
次の項目に心当たりはありませんか?
- パート・アルバイトが多い
- 週20時間前後で勤務している人がいる
- 月8万8,000円前後のパートがいる
- 雇用契約書と実際の勤務時間が違っている
- 社会保険に入りたくないという従業員がいる
- 複数の店舗・支店・営業所がある
- 会社全体で何人として判定するのか分からない
- ここ数年、社会保険の加入対象者を見直していない
- 厚生年金の被保険者数が36~50人程度になっている
- 2027年10月の適用拡大に向けた準備をしていない
一つでも当てはまったら、一度確認しておくことをおすすめします。
「このパートさん、社会保険に入れる必要がありますか?」だけでもご相談ください
社会保険の適用判断は、
「週20時間だから加入」
「月8万8,000円だから加入」
というように、一つの数字だけで判断できないケースがあります。
特に、
「社会保険に入れた方がいいのか分からない」
「従業員本人が加入したくないと言っている」
「雇用契約では20時間未満だけど、実際は超えている」
「51人の数え方が分からない」
「2027年10月から対象になるのか確認したい」
といったケースは、会社ごとの状況を確認したうえで判断することが大切です。
ひらおか社会保険労務士事務所では、企業様からの社会保険の加入判断・手続き・雇用契約の見直しなどのご相談を承っています。
「対象かどうかだけ確認したい」という段階でも大丈夫です。
加入漏れが見つかってから慌てる前に、一度確認してみませんか?
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お問い合わせの際に、**「社会保険の適用拡大の記事を見た」**とお伝えいただければスムーズです。
参考資料
今回の通達は、厚生労働省保険局保険課長・年金局事業管理課長から日本年金機構に対して発出されたもので、2024年10月1日の企業規模要件引下げに伴う事務取扱いを示したものです。
日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大